続いて、会話の中に具体的な内容を表す単語が出てきたら、相づちに必ずその単語を交ぜ、3オウム返しをします。たとえば、「寒い」という単語が出てきた場合は、「あら、寒いんですね!」と、「カーディガンを着たい」と言った場合は「なるほど、カーディガンを着たいんですね!」と、そのまま打ち返すわけです。

 相手からの会話がひととおり出切ったところで、4内容をまとめ、要約して、ゆっくり打ち返します。

 「○○さん、寒いのでカーディガンを着ましょうね」

 こんな具合です。
 

私(I)の感謝を伝えるか? あなた(YOU)を褒めるか?

 そして、最も重要なポイントが5の褒めること。

 私は、認知症の人とのコミュニケーションは、「褒ミュニケーション」と呼んでもいいと思っています。お互いがポジティブになれ、晴れ間をつくり出す重要な要素だからです。

 褒めるメッセージには、大きく2つの出し方があります。

 私(I)が感謝する……「ありがとうございます」「助かりました」「私、びっくりしました」「感心しました」「楽しかったです」「勉強になりました」など、「私」が主語になって、感謝や称賛のメッセージを伝える。

 相手(YOU)を褒める……「すごいですね」 「さすがですね」「えらいですね」「立派ですね」「一番ですね」……など、「相手」の能力や行動を褒める。

 これらは「Ⅰメッセージ」と「YOUメッセージ」と呼ばれているものですが、相手がどちらを好むかによってメッセージの出し方を決めることが重要です。

 これはなにも、認知症に限った話ではありません。

 恋愛だって、「かわいいね」と言われたときと、「君といると幸せだ」と言われたときと、どっちがうれしいかは、結局その人次第ですよね。

 「この人はどっちのメッセージがハマるんだろう」と普段の会話からつかんでおけば、たくさん〝あなた〟を褒めてあげるべきなのか、〝私〟の気持ちをどんどん伝えたほうがいいのか、というふうに分かれていくわけです。

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褒めればいいというものでもない