松本徹三『仕事が好きで何が悪い!生涯現役で最高に楽しく働く方法』(朝日新聞出版)
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 ロジックのほうは、使わないで放っておいたら錆びてしまいますが、使い続けていれば錆びつくことはありません。問題はメモリーです。みんな歳をとると記憶力が落ちるといいますが、それは誤解です。

 直近の知覚を少しの間貯めておく「脳基底」と呼ばれるところの能力は落ちるかもしれませんが、大切なことだと意識されて大脳皮質に貯められる長期的なメモリーは、年を取れば取るほど増えていきます。

 脳は、私たちが寝ている時やぼーっとしている時でも、休みなく蓄えた情報を無作為にスキャンしているようです。そこに強い問題意識がガーンと居座っていると、一見無関係のように思える複数のメモモリーが、これに引っかかる形で結びつき、これによって、思いもしていなかったようなアイデアがパッとひらめくのだと私は思っています。

 そうであれば、メモリー量が多ければ多いほど、そして、その内容が広範囲に広がっていればいるほど、ひらめきには有利になるはずです。つまり、年を取れば取るほど、ひらめきの頻度と精度は高まるはずなのです。私は今、若い時以上にアイデアがひらめいて、明け方よく飛び起きてパソコンに向かっています。

 ただしひらめきには強い問題意識が不可欠です。「これをやりたい」「世の中のここを変えたい」など明確な目的があると、脳がそれに関連する情報を見つけて、新しいアイデアや問題解決を提示してくれます。

 年を取ったほうが能力は増すと信じる理由はそれだけではありません。年寄りには若者にないメリットがあります。それは若い時のように誰かと競争しなくてすむことです。

「あいつには負けたくない」とか「そのためにはあの上司に取り入っておかなければ」など余計な労力を使わなくてすむ。つまり純粋に仕事に没頭できるのです。これは年寄りならではの特権です。

 能力があってもそれを活かす仕事がない、とぼやく人も多いでしょう。ハローワークに行けば、警備員や清掃員しかないという人もいる。視点が逆です。警備員や清掃員の求人がたくさんあるということは、それだけ世の中で必要とされているからです。求められるものに応えていくのは素晴らしいことではありませんか。

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能力は発揮できる!大切なのは〇〇?