AERAの連載「2024パリへの道」では、今夏開催されるパリ五輪・パラリンピックでの活躍が期待される各競技のアスリートが登場。これまでの競技人生や、パリ大会へ向けた思いを語ります。
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昨年12月、陸上でその年に最も活躍した選手を表彰する「アスリート・オブ・ザ・イヤー」に選ばれた北口榛花は、壇上でこうスピーチした。
《私は、選手としてトップを目指すことが当たり前であると思っていますし、そのために犠牲を払うことや海外に出ていくことは当たり前だと思って、これまでやってきました。しかし、それを当たり前だと思えていることが私の強さであり、それを当たり前だと思えていない人もたくさんいるということが、最近になってわかってきました》
今年4月の会見で、その真意を尋ねられた北口は、2019年から練習を行うチェコと日本の違いを説明した。
日本では「プロ選手」ではなくても多くのアスリートが実業団選手として競技に専念できる環境がある。一方、チェコは、競技だけで生活できる選手は限られ、年齢を重ねるとその門はさらに狭まるという。男女ともにやり投げで世界記録を持つ強豪国であっても、やり投げだけで生活できる選手は数少ない。厳しい環境にさらされる分、一戦一戦や日々の練習への姿勢もおのずと変わってくる。
「過ごし方に若干差があるかな。(日本の)他の人ももっと外に出て行ったらいいのになと思ったり……余計なお世話かと思うんですけど」(北口)
昨年金メダルをとった世界陸上では、チェコのメディアのインタビューに流暢(りゅうちょう)なチェコ語で応じていたが、自らセケラックコーチに指導を仰ぎ、単身でチェコに渡った5年前は、言葉もわからず、知り合いもおらず、孤独だったという。
「いまはもう、言葉の面はやり投げに関しては困る部分はないかな。もし日本語同士で話していても、細かい部分は、やって試して(コーチに)見てもらって、という繰り返しが必要。そういう部分をくじけずに何回も、やることが大事なのかなと思います」
チェコに渡って6年目の現在も競技漬けの生活は続く。「友だちはいないし、スマホが友だち」という北口はK-POPの動画がお気に入り。