ジャーナリストの近藤康太郎のもとには、若い記者からやりがいを感じられる〈仕事〉、おもしろい〈仕事〉がしたいという相談が寄せられる。どうすれば、したい仕事をしながらご機嫌に働いて生きていけるのか。『ワーク・イズ・ライフ 宇宙一チャラい仕事論』から。
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ブラフ8割でも企画は通してしまえばいい
わたしは長崎県の旧田結村というところで、十年以上、百姓をしています。棚田で米を作っている。それから、長崎県や熊本県で鉄砲猟師もしています。これも、もう八年になります。
食肉処理業の許可もとりました。おカネこそとっていませんが、東京・下北沢のフレンチビストロに鴨肉を卸していて、毎年、わたしの鴨を楽しみに遠方からも食べに来てくれるお客さんがいる。
これって全部、〈仕事〉です。原稿にしてプリントされていますから。だけど、新聞社が「おもしろそうだから、おまえ、百姓になってみな」なんて言うと思います? 「山に行って、鴨を撃って、それをフレンチレストランに卸して、書け」とか。言うわけないじゃないですか。
これ全部、自分が発案して、企画書を書いて、上司を説得しているんです。「読者に受けますよ。時代はいま、地方移住」とか、テキトーに。ブラフ八割で。
成算なんか、まったくなかった。無計画・無鉄砲を通りこして、世の中なめてんのかみたいな乗りで企画を考え、会社を説得し、九州に移住してきている。
オオカミ少年にならないためにも結果は出す
結果として連載記事が読者に受けたから、いまも続いているだけです。企画は、テレビ番組にもなったし、『アロハで田植え、はじめました』『アロハで猟師、はじめました』という本にもなり、韓国語に翻訳され、海外からも取材が来て、韓国の新聞に載りました。
でもこの企画を、だれもわたしに、「やれ」なんて言ってませんよ。
むしろ、会社は「やめてくれ」と思ってますね。だって、百姓はまだしも、鉄砲撃ちの猟師なんて予測不能な危険がともなうわけでしょ。猟師のイメージもよくないし。生きものを殺すわけですからね。