山田千穂『ずるい聞き方――距離を一気に縮める109のコツ』(朝日新聞出版)
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 著名人の取材で起きがちなこととして、こちらが尋ねていないのに、すでにメディアで何度も話している話を本人がどんどん縦に深掘りしていくケースがあります。話し慣れている話題は、何も考えずに話せるので楽なのです。

 でも、こちらとしては新しい情報を聞き出したいので、「ご両親はなんとおっしゃっていたんですか?」「そのとき奥さまとはどんな状況だったんですか?」と、第三者の視点で話を横に広げていきます。すると相手も、「そういえば……」と客観的になり、レアな話を聞けることがあるのです。

 それでも話が広がらないときは、単純に「他にはありますか?」と単刀直入に聞いてもいいでしょう。

 縦の視点を横に変えるだけで、話はどんどん広がっていきます。

「もし〜」でもう一歩踏み込む

 聞きたい話を、もう一歩踏み込んで聞き出したい。

 そんなときは、「もし〜だったら」と仮説を立てて、ちょっとあざとい聞き方をするのも効果的です。

 直撃取材でよく使うのは、「もし娘さんがご結婚されたら〜」「もしお孫さんが生まれたら〜」といったポジティブな仮説質問です。

 特に、子どもの結婚や孫の誕生などのお祝い事は話が弾むもの。

「実はすでにそんな話が出ていて花嫁姿が楽しみで」

「いつも甥っ子たちを可愛がっている娘の孫の顔も早く見たいですね」

と打ち明けてくれた、人気アイドルの結婚相手のご両親もいました。

「でも、相手は超有名なアイドルグループの一員なのに本当に結婚なんてできるのかしら……」

「ファンがどんな反応をするか心配。反感や反発は聞いていないですか?」

と、最後は悩み相談までしてくださった娘思いの素敵なご両親でした。

「もし〜」を考えるときは、話題の本で使われている言葉をフックにすることもあります。

 たとえば、永松茂久さんの『君は誰と生きるか』(フォレスト出版)という本の帯にある「もし明日死ぬとしたら、誰と過ごしますか?」というキャッチコピー。これは、何度も取材で使わせてもらいました。

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「自分の人生は全てネタ」