![山田千穂『ずるい聞き方――距離を一気に縮める109のコツ』(朝日新聞出版)](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/3/4/840mw/img_3474cdd23a2cc63695f13e076db354ae755425.jpg)
特に接客や取材など相手ありきの場面で、自分の意見や価値観を押しつけるのは、上から目線で相手を見下していると思われかねないのでタブーです。
相手から意見や感想を求められたら、率直に伝えたほうが信頼されます。でも、そうでなければ相手の気持ち最優先で話を聞くことだけに集中しましょう。
意見を言わずに黒子に徹する
前項と似ていますが、人の話を聞くより自分の意見を言いたがる人っていませんか?
「聞く」ということは、相手の心の引き出しから、相手の気持ちや考えを一つずつ取り出して、話してもらう作業です。
そこで自分の意見を言ってしまったら、相手は取り出しかけた言葉を手に持ったまま聞き役になったり、あるいは引き出しにまたしまってしまいますよね。
それが頭ではわかっていても、基本的に人は話を聞いてもらいたい生き物ですから、相手の話題を奪って自分が主役になろうとする人が多いのです。
ではどうすれば、聞き役に徹することができるでしょうか?
考えた末に辿り着いたのが、主役がいるときは自分は黒子になりきり「意見を言わない」に徹すること。
私がそのことを悟ったのは、接客と記者の仕事がまったく違うと気づき、聞き上手な人たちを研究していた頃です。
先輩記者の取材に同行したときは、やりとりをよく観察して分析し、レポートにまとめ、テレビやラジオで聞き上手な人がいたら、どんな手法を用いているのか意識しながら会話を聞いていました。
その時期に学んだことを実践してみて、「こうすれば話してもらえるんだ!」と腑に落ちたのが意見を言わないために黒子に徹したときだったのです。
109の頃は「私は私!」を貫くバリバリ主役の意識で仕事をしていたので、大げさかもしれませんが、黒子になりきるには「自分を殺す」ぐらいの覚悟が必要でした。
相手からこちらへ近づいて来てくれる仕事と、自分から相手に近づいていく仕事とでは、接し方が180度異なります。
後者の場合、「私は」「僕は」「自分は」という主語をいったん捨てて、「聞くことはしても話しすぎない」意識を持って黒子になりきらないと、相手は心を開いてくれない のです。
(編集協力/樺山美夏)
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