山田千穂さん(写真:渡辺利博)
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 渋谷109のカリスマ店員から転身して有名週刊誌記者として活躍する山田千穂さんは、いつの間にか、するりと懐に入りこみ、相手は気をゆるす。洋服の販売でも突撃取材でも、すぐれた話術によって成果を上げてきた。競争と駆け引きの現場で山田さんが培ってきた相手がつい本音を言いたくなってしまう聞き方のコツの一部を、初の著書『ずるい聞き方――距離を一気に縮める109のコツ』から、一部抜粋・再編集して紹介する。

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相手が話したいことは徹底的に聞く

「相手に話したいことを全部話させてから、こちらの聞きたいことを聞きなさい」

 これは長年お世話になっている、芸能リポーターの石川敏男さんから教えていただいたことです。

 この道50年の石川さんは、会話の駆け引きが本当にお上手で、最近では田中みな実や亀梨和也さんの交際第一報を報じた人物でもあります。

 直撃取材で時間がないとき以外は、この石川さんのアドバイスを守って、相手が話したいことを聞き終えるようにしています。すると、「こんなに聞いてもらって申し訳ない」という気持ちになるのか、こちらの質問にも答えてくれるのです。

 109時代も、お客さまから何か悩みを相談されたら、時間の許す限り話を聞いていました。

 悩みや不安のモヤモヤを吐き出すと、安心感を覚えて心が浄化されるカタルシス効果が得られるといわれています。すると気持ちがスッキリして、人の話を聞く心の余裕ができるのです。

「聞きたくもない他人の話を徹底的に聞くなんて時間の無駄じゃない?」と思う人もいるかもしれませんが、とんでもありません。

 相手の話を聞けば聞くほど、お互いにとってプラスになるのです。

白黒つける必要はない

 もしもあなたの話を、「それは間違ってるよ!」と頭ごなしに否定されたらどんな気持ちになるでしょうか?

 たとえ本当に間違っていたとしても、その相手とはそれ以上、話す気になりませんよね。

 不倫している男性に取材するときも、「不倫しちゃダメですよね」と正論をぶつけたところで、何も話してくれません。

 人の話を聞くときは、正しいか正しくないか、白黒つける必要はないのです。

 最優先すべきは、相手の心の所在を推し量り「理解しようとする」こと。

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意見は言わずに黒子に徹する