「コンビニ百里の道をゆく」は、54歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。
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いつもより少し遅めでしたが、今年も梅雨の季節になりましたね。
たしかに雨の日は、外を歩いても靴が濡れて靴下まで染みてきたり、鬱陶しく感じることもあります。でも一方で、季節が急激に深まっていく過程を体感できる、魅力的な面もあると思うんです。
新緑の季節を経て、ひと雨降るごとに緑がどんどん濃さを増していく。田んぼの稲は着実に育ち、紫陽花に代表される花々も、さまざまに彩を増していく。そういった生命の力を強く感じさせてくれる時期でもあります。
自宅近くのよく散歩するコースに小さな池があって、そこにはオタマジャクシがたくさんいるんです。そのオタマジャクシもじきにカエルになって大合唱が響き渡り、そして梅雨も終盤になると今度はセミが鳴きだす。そういった「命の循環」も実感できる。私は毎年、それを楽しみにしています。
家庭菜園をやっていた頃は、雑草と闘う季節でもありました(笑)。ひと雨あってその後ぱっと陽がさすと、もう目に見えて草が伸びてくる。それはそれは大変でしたけれど、一方でやはり水は地球にとって、生命の源なんだなと実感する日々でもありました。
天気予報では「明日は雨です」とどちらかというと残念なニュアンスで伝えられます。でもその昔は、作物が無事収穫できるようにと雨乞いをしていたくらいです。昨今の豪雨災害には十分な警戒が必要ですが、梅雨があることで夏がよりいっそう爽快な、楽しみな季節にもなってくるのだとも思います。
しとしと降る雨の中で、もう出かけるのもやめて、窓を少し開けてカエルの声を聞きながらゆっくりと家で本を読む──小さい頃のそんな日を思い出すこともあります。
梅雨の日の過ごし方として、悪くないのではないでしょうか。
※AERA 2024年7月8日号