さっそく今朝はいつもの店で現金を使う。久々すぎてドキドキしたが大丈夫でした(写真:本人提供)

 当コラムでは何度か、現金で払うことが迷惑とでも言わんばかりの世の風潮に疑義を表明してきた。だが正直言うと、私も最近ではカフェの支払いなどでクレジットカードを使うことが増えていた。一瞬で支払いが終わるタッチ決済に慣れてしまうと、あたふた現金を数えている時間が店の負担になっているのかもと忖度するようになった。さらに最近は「現金お断り」店すら見かけるようになり、ますます(現金ってそんなに迷惑なのか)と後ろめたい気持ちを抱くようになった。

 でもですね、んなふうに決めつけることはなかったんである! お金を払うことは、自分の生活を豊かにしてくれる店への敬意と応援だ。そこに「どこぞの他人」に横入りをさせないことも、店を守ることに繋がるはずなのだ。

 良い店とは、感じの良い古い居酒屋のように、店と客が時間をかけてキャッチボールしながら作り上げていくものだ。そこに「便利だから」「売り上げが伸びるから」「これがないと生き残れないから」と誰かが入ってくる。結果、何が起きるのか。もう一度ちゃんと考えねばならぬ。

AERA 2024年6月24日号

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稲垣えみ子

稲垣えみ子

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

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