生成AIを使えば画像も自在につくれる。上の画像は、マイクロソフトが公開している画像生成AI「Bing Image Creator」を使って、プロンプト(指示)に「生成AIを使って記事を編集するウェブメディアの編集者」と打ち込んで、生成されたもの

信じるのか疑うのか

 変化を余儀なくされるメディア。では、そのメディアから情報を受け取る私たち読者の側には、どんな「態度」が求められるだろうか。

「ITmedia NEWS」編集長の井上輝一さんは、「もしこの記事に載っている私の発言の一部は生成AIで作っていますと私が言ったら、読者の皆さんはどう感じるでしょうか。ここまでの記事は『疑わしい』と感じるようになるでしょうか」と問いかける。

「もし『感じるようになる』なら、あなたは人間を信用しすぎているかもしれません。もし『とくに感じるようにならず信用する』なら、あなたはAERAもITmedia NEWSも、とにかくこの記事に関わる人たちを信頼しているのだと思います。そのどちらでもなく、『AIだろうと人間だろうと常に批判的な目を持って接している』なら、非常に情報リテラシーの高い方とお見受けします」

 井上さんは「三つ目の人は理想的で、とくに私から言うことはありません」としたうえで、こう指摘する。

「『信用する』の人は、特定の人や組織を信頼するのは時間が限られた中では有効ですが、長いスパンで見れば時折は批判的な目で見て、自分の中のメディアへの信頼度をアップデートしていくといいのでは」

求められる見極め力

 井上さんが気にするのは「疑わしいと感じる」人だ。

 人間を信頼するならするで、何をもって信頼するのか。AIを取り入れていたら途端に信頼をやめるのは正しいのかなど、「情報に対する接し方を見直してみることをおすすめします」と話す。

「AIは間違えます。でも、人間だってウソをつきますよね。『この人の言うことなら』と信頼することを日常的に私たちはしていますが、それも本当に正しいのかどうか、常に批判的に考えておいたほうがいい。その批判の度合いの差がAIか人間かで変わってしまうようだと、そのうち人間の方に騙されてしまうかもしれないですよ」

 その上で、読者のリテラシーで大事なことは「『どんな情報なら信用できるのか』を慎重に見極めること」だと言う。

「査読済みの論文や調査機関の資料といった一次情報にあたれ、とは言いません。ただ複数の方面から情報を仕入れるクセを付けるといいんじゃないでしょうか。他のメディアを読むもよし、友人や身の回りの人に話題を振ってみるもよし、です」

 生成AIで書いているか、人間が書いているかは本質的なことではなく、どんな情報でも見極めは必要と井上さんは言う。

「現在のAIブームを見ていると『AIに聞いてみた』『AIはこう言っている』など、生成AIの回答を神格化する向きさえありますが、全くもってナンセンス。生成AIは道具に過ぎず、回答に対して保証も責任も取ってくれません。情報の検証プロセスは個々人それぞれが持つしかないと思います」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2024年6月24日号より抜粋

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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