「玉石混交」と言われるウェブメディア。背景には収益化の難しさがある。生き残るにはどうすればいいのか。AERA 2024年6月24日号より。
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今も雨後の筍のごとく登場するウェブメディア。その未来はどうなるのか。社会学者で日本大学教授の西田亮介さんは、人々のメディアへの接触行動が紙からウェブメディアになる流れは「不可逆」だという。
「しかし、24時間365日、情報を収集しコンテンツとしてネットでニュースを配信する新しい報道事業者は、過去20年ほどを振り返ってもほとんど生まれていません。それどころか、新聞社は支局の数も記者の数もどんどん減り、記者の数は過去10年で約2割減っています。つまり、伝統的なマスメディアと報道が弱まっています」
ニュース砂漠が顕在化
報道が痩せ細ればどうなるのか。米国では地方のニュースを伝えるメディアが消滅する「ニュース砂漠」が起きているが、日本も5年か10年すればニュース砂漠が顕在化するだろうと、西田さんは言う。
「そうなれば権力監視機能が弱まり、質の高い一次情報やストレートニュースが出てこなくなることを強く懸念しています」
大手新聞社など信頼できると目されている媒体が早くDX(デジタル化)を行い、ネットで存在感を出していくことが必要だができていない。「マス」のメディアがなくなり、ウェブメディアは「玉石混交」状態だと話す。
「どこを見れば良質な情報にアクセスすることができるのかという、ある種の相場感がまだ形成されていない。それが、いまの日本のネット空間の課題ではないでしょうか」
こうした背景の一因にあるのが、ウェブメディアのマネタイズ(収益化)の難しさだ。質の高い記事をつくるにはコストがかかる。変化の速いデジタル空間で、コストを補う収入源を確保し続けるのは簡単ではない。データアナリストで、コンテンツ編集支援サービスなどを行う「ストリーツ」(東京)代表の田島将太さんは言う。