魅せるより勝つためのサッカー
町田のサッカーは他のクラブと一線を画す。DFラインから細かいパスで攻撃を構築するクラブが多い中、町田はロングパスを多用。競り合ってセカンドボールを回収し、縦にどんどん仕掛けていく。相手ボールの際はハイプレスでボールを奪い取り、運動量で圧倒する。ロングスローからの攻撃も大きな武器だ。守備側は落下地点が予想しづらく、ボールの処理が後手に回る。はね返されても、町田の選手たちは出足が速い。何度もゴール前に仕掛けてくる波状攻撃は迫力十分だ。
町田を取材する記者は強さの秘訣をこう分析する。
「黒田監督と金明輝ヘッドコーチがロングスローやセットプレーからの攻撃を含めて様々なパターンを構築して選手に刷り込ませている。ロングボール中心のシンプルなサッカーに見えますが、攻撃のパターンは多彩で緻密です。相手を徹底的に研究し、ウィークポイントを見抜く戦術眼も長けています。首位にいるのは一過性の勢いではありません。まぎれもなく実力だと思います」
町田のサッカーには賛否両論がある。勝つために逆算したサッカーは魅せるプレーが減り、面白みに欠けるという声が上がる。この点に関して、欧州のサッカーを取材する通信員は反論する。
「すべてのクラブが魅せることに重点を置いたパスサッカーを志向したら、戦力差がそのまま出てしまう。町田みたいなサッカーは面白いと思いますよ。プレーが汚いと言いますが、欧州のクラブはもっとガツガツいきますから」
ただ、こうも付け加えた。
「相手チームへのリスペクトは必要だと思います。一線を超えた悪質なタックルやプレーは大ケガをする危険性がある。サッカーのスタイルの多様性は尊重されるべきですが、ダーティーなイメージがつくと審判の判定にも影響してきます」
まもなくJ1の対戦が一巡する。後半戦となる2度目の対戦では各クラブが対策を練ってくるだろう。J2から昇格したチームが1年目で優勝したケースは、11年の柏と14年のガンバ大阪のみ。町田が頂点に立った場合はJ1初昇格で初制覇という快挙を達成する。黒田監督はJリーグで革命を起こせるか。
(今川秀悟)