町田の試合はネットが荒れる
SNS上では筑波大に対する批判より、黒田監督の発言に対して批判的なコメントが目立つ。サッカー担当のスポーツ紙記者は、その理由をこう語る。
「町田の試合はネット上が荒れるんです。ラフプレーが目立つと相手サポーターから指摘されることが多く、町田の選手が相手PKの前に給水ボトルでボールに水を掛けた行為が問題視されたこともありました。黒田さんが今回筑波大を批判したことに、サッカーファンから共感ではなく、『他のチームのことを言えないだろ』という空気が流れているのは、こういった背景があるからです。歯に衣着せぬ発言をする黒田さんのキャラクターも影響しているかもしれません」
黒田監督は現役でプロ経験がない。大阪体育大学で選手としてのキャリアにピリオドを打ち、コーチをしながら星野リゾートでホテルマンとして勤務。94年に青森山田高校の監督に就任すると、28年間指揮をふるい全国屈指の強豪校に押し上げた。全国高校サッカー選手権に3度優勝し、全国高校総体、高円宮杯U-18プレミアリーグファイナルも制している。教え子には柴崎岳(鹿島)、松木玖生(FC東京)、室谷成(ハノーファー)など豪華な顔ぶれがいる。
東北地方の高校のサッカー指導者は、青森山田のサッカーを「勝つために無駄を排除したサッカー」と形容する。
「青森山田の選手は体格が一回りも二回りも大きい。パワーがあるしスピードもあってよく走る。球際に強いしスキがなかったです。彼らの技術からすれば華麗なパスワークを見せられると思うが、勝つために最短距離でゴールに向かってくる。選手たちの勝利への執念を感じましたね」
高校サッカーの名将がJ2町田の監督に就任したのは昨年。異例の決断に、「プロと高校生は違う」、「そう簡単にはいかないだろう」と懐疑的な見方があったが、見事に覆す。
町田は16年以来J2の中位に停滞していたが、黒田監督の就任1年目で26勝7敗9分と圧倒的な力でJ2優勝を飾り、J1に初昇格。今年はJ1でダークホースどころか、18試合消化時点で12勝4敗2分と首位に立つ快進撃で主役になっている。