似たような場面が、実弥にもある。刀鍛冶の里の戦闘では、上弦の鬼2体が同時に出没し、恋柱・甘露寺蜜璃と霞柱・時透無一郎が応戦せねばならない厳しい状況であった。その中で、柱2人、さらには実弥の実弟・玄弥と炭治郎たちが無事に戻ったことで、いつもよりも明るい様子を見せる。「あーあァ 羨ましいことだぜぇ なんで俺は上弦に遭遇しねえのかねぇ」というセリフは、玄弥や他の柱が死亡していたら、決して出てはこない言葉である。

 素直に「よかったね」とは言えないこの2人には、やはり性格的に似ている部分があるといえるだろう。

鬼を憎む血筋と深い因縁

 鬼殺隊の隊士たちのほとんどは鬼の被害者だ。家族、恋人、友人が鬼に殺害され、自分も恐ろしい思いをしてきた。鬼殺隊の入隊試験でも未熟なままに鬼と対峙し、入隊後も目の前で仲間を失い続ける。鬼への恨み、鬼への憎しみは根深い。

 その中でも、実弥と伊黒には特別な共通点がある。刀鍛冶の里の戦闘時、弟の玄弥の回顧によって明らかになった、不死川兄弟の「母親の鬼化」と、母による弟妹たちの殺害事件である。伊黒の過去は、これからもっと後に詳細が語られるのだが、彼もまた親族に鬼と縁が深い者がおり、身内から命を狙われた経験がある。

――鬼は恐ろしい。人間の言葉を話し、思い出を共有し、理性を失って凶暴化し、欲のために他者を殺す。かつて人であったモノへの情に惑わされることなく、鬼を滅殺せねばならないという思いが、実弥も伊黒も強固である。幼い頃に「身内を信じることができなくなった」悲惨な経験の傷は、今もなお深い。

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辛辣な言葉の「真意」