また、そんなしぐさだけでなく、同じ女性剣士である胡蝶しのぶに比べて、露出の多い胸元デザインの隊服を着ており、いわゆる「女性らしさ」が強調されていた。そのため「お色気キャラクター」と誤解されることがある。

 炭治郎から「鬼殺隊への入隊理由」を聞かれた際に答えた、蜜璃のこのセリフは有名だ。

<あのね…添い遂げる殿方を見つけるためなの!!>(甘露寺蜜璃/12巻・第101話「内緒話」)

 鬼殺隊の戦いは生半可なものではない。肉体修復がなされる鬼とは異なり、人間である隊士たちは傷つき、多くの者の命が失われる。目はつぶれ、手足を失くし、鬼の毒の後遺症など、再起不能になる隊士も多い。

 ふつうに考えれば、「添い遂げる殿方」を見つけたいだけならば、鬼という「怪物」との戦いに身を置く必要はないだろう。だがこのセリフには、蜜璃が鬼殺隊として闘うに至った”深い意味”が隠されていた。

■蜜璃の苦悩と「弱さ」

 明るく屈託のない蜜璃であるが、刀鍛冶の里編では、彼女が心中の苦悩を吐露する場面がある。彼女は、通常の人間をはるかにしのぐ、優れた「筋肉」を持ち、それゆえに、常識を超えた量の食事をとる必要があった。さらに、彼女の髪は、若葉のような鮮やかな緑色と愛らしい桃色をしていた。

 まだ封建的な「大正時代」という舞台設定、女性が男性よりも「強い」こと、他の女性と「違う」ことは異端視されるには十分な理由になった。それゆえ、蜜璃はお見合い相手の男性からひどい言葉を投げつけられる。

<君と結婚できるのなんて か猪か牛くらいでしょう そのおかしな頭の色も 子供に遺伝したらと思うとゾッとします>(甘露寺蜜璃の見合い相手/14巻・第123話「甘露寺蜜璃の走馬灯」)

 尊厳の否定、自分という存在の否定に他ならなかった。悩んだ蜜璃は、食事を減らし、髪を黒く染め、非力なふりをし、たくさんのうそをついた。

<いっぱい食べるのも 力が強いのも 髪の毛も全部私なのに 私は私じゃない振りをするの?><私のままの私が居られる場所ってこの世にないの?>(甘露寺蜜璃/14巻・第123話「甘露寺蜜璃の走馬灯」)

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