岡山市で5月26日に開催された全国植樹祭。式典に出席された天皇、皇后両陛下が、その日の夕方に訪問されたのは、2018年の西日本豪雨で大規模な浸水被害が発生し、災害関連死を含めて74人の命が失われた倉敷市真備町。復興に取り組み続けてきた人々がおふたりから受け取ったのは、心にしみる言葉と、前に進むための「新しい力」だった。
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天皇陛下と皇后雅子さまが訪れた高台からは、6年前の夏、豪雨により一帯が浸水し、多くの人命が失われた倉敷市真備町の町並みを望むことができた。
おふたりは街に向かって深く一礼し、犠牲者へ祈りを捧げた。
おふたりが立っていた高台は豪雨の後、市民の避難場所となる防災公園として整備された場所。この3月には、豪雨で氾濫した小田川と高梁川の合流地点を付け替える工事も完了したばかりだ。
犠牲者のために祈りを捧げた陛下と雅子さまは、地域の復興に取り組む人たちの言葉に耳を傾けた。
そのひとりである真備船穂商工会の会長の中山正明さん(70)に、陛下は声をかけられた。
「大変でしたね。501の企業が水害に遭ったということ。よくここまで立ち直れましたね」
中山さんの自宅も水に浸かり、家具を製造する会社も大きな被害を受けた。そして商工会の会長である中山さんは、国や自治体などの補助金をどう申請すればいいかわからず、呆然とする中小規模の事業所が少なくないことに気づいた。
「このままでは、声をあげられない人が取り残されてしまう」
そう危惧した中山さんは、被災から1カ月後には地域のために動き出した。事業者と国、自治体、金融機関をつないで補助金の申請手続きを支援し、事業者の復興を支える体制づくりに奔走した。
そうした取り組みの結果、被災から2年半ほど経った2020年の年末には、9割の事業所が事業を再開。その後も市の補助金を活用した支援を後押しし、地域の活気を取り戻すことができた。