飲み会で新入社員が辞めるケースもある。写真はイメージ(GettyImages)

飲み会不参加は「死刑」

 仕事以前に、組織の風土に嫌気が差して即退職したケースもある。

 この4月に都内のIT系企業に就職した小島健二さん(仮名=22)は同月20日に退職した。小島さんが耐えられなかったのは、旧態依然とした「飲み会文化」だ。

 小島さんが大学に入学した2020年はコロナ禍で、大学での授業や人間関係もリモートが基本だった。サークルにも入っていなかったので、飲み会の「コール」や「ゲーム」も知らなかった。そのぶん、個人の力で成果が上げられる仕事を見据えて、JAVAやCobolなどのプログラミング言語を専門的に学んだ。そのかいあって、エンジニア職として採用されたのが入社したIT系企業だった。

 研修自体は悪くなく、エンジニアという職業にはより魅力を感じていた。だが、会社が主催した「歓迎会」ですべてが反転するような絶望を覚えたという。

 飲み会では先輩から“一発ギャグ”を強要された。先輩たちは「男同士の楽しいムチャぶり」のような感じでハシャいでいたが、大学時代にそうした経験がなかった小島さんは心底嫌だったという。だが、小島さんがジムに通っているという話を引き合いに出され、「じゃあ、なかやまきんに君のモノマネをやれ!」とはやしたてられ、結局、ほぼ初対面の人たちの前でモノマネをやらされたという。

 さらに、飲み会には同期の女性も参加していたが、酔った先輩が「最近、女性と遊んだのはいつなんだ?」と執拗に聞いてきた。異性にだらしないわけでもないのに、女性社員の前でそういうことを言われるのも不快だったが、ひきつった笑いしかできなかった。

 歓迎会の後に開催された「送別会」では、一発芸の強要こそなかったものの、上司たちから出てくる知らない話に相づちを打つだけの、つまらない時間を過ごした。

 そこで、小島さんは「二度と会社の飲み会には参加しない」という決意を固める。そして、3回目の飲み会の誘いには、強い意志を持って不参加を表明した。しかし後日、先輩から飲み会に参加しなかったことをとがめられ、「男が飲み会に参加しないとか、死刑だから」と吐き捨てられた。この言葉が引き金となり、会社への絶望以上に怒りが沸いてきて退職を決意したという。

「上司に会社を辞める意志を伝えたところ、『何でやめるんだ』と引き留められ、4回くらい面談をしました。それでも意志は変わらないことを伝えると、『そんなんじゃ、社会人としてやっていけるわけがない』と言われましたが、そのまま退職しました」(小島さん)

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