上弦の鬼・玉壺が作り出した化物に里が襲われた時、蜜璃は一瞬でそれらを倒したのだが、目撃した刀鍛冶たちが、「強…」「速っ…」「凄ェ!!」と口々につぶやいていた。彼らが蜜璃のことを「可愛いから 忘れてたけど 強いんだよな 柱って…」と言っていたのは印象深い。

 刀鍛冶の男たちは、里に逗留中の蜜璃を何度か見かけているわけで、彼女の姿を見知っていたはずである。しかし、蜜璃は明るく朗らかで、ふだんの様子と鬼との戦闘中の姿との間には、大きなギャップがあったのだ。

■自分を好きになれなかった蜜璃

 蜜璃は他の隊士たちと違い、身内を鬼に殺されたエピソードはなく、生まれも裕福、家族仲良く暮らしていた。しかし、年頃の娘に成長した蜜璃は、見合い相手の男から、痛烈な言葉でその肉体的特性を否定されてしまう。以降、彼女は自分の「強さ」をひた隠しに生きていこうとするのだが、そうやってうそをつく自分のことも「おかしい」と思うようになる。

「いっぱい食べるのも 力が強いのも 髪の毛も全部私なのに 私は私じゃない振りするの?」

(甘露寺蜜璃/14巻・第123話「甘露寺蜜璃の走馬灯」)

 蜜璃は「・猪・牛」にたとえられるほど「強すぎる」自分を好きになれず、本当の姿を偽り続ける自分のことも好きになれない。そんな蜜璃の迷いと苦悩を救ったのは、鬼殺隊の長・産屋敷耀哉の「自分の強さを誇りなさい」という言葉だった。蜜璃は自分の「常人よりも強い肉体」を「他者を守るため」に使うため、鬼殺隊への入隊を決意したのだった。

■鬼殺隊を自分の居場所に

 蜜璃の戦闘力の高さが最初に分かるのは、刀鍛冶の長・鉄珍を救出に向かう道中で、金魚型の化け物を一度に何体も倒したシーンだ。

 そして、さらに驚くのは次の場面だ。部屋の天井を突き破るほどの超特大な金魚型の化け物を一瞬で切り刻んだ。あの薄く柔らかく、長い蜜璃の日輪刀は、本来であれば広い空間で戦うことに適している。壁が壊れているとはいえ、区切られた室内という空間、まわりには傷つけてはならない人間が数人残っており、的確に敵だけを攻撃するのは至難の技だ。それを蜜璃はいとも簡単にやってのけた。また、鬼の手から落下する鉄珍を受け止めるために、何よりも大切なはずの自分の日輪刀をサッとおいた様子も、蜜璃らしいしぐさだった。

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「みんな私が守るからね」