「十和利山クマ襲撃事件」現場に現れたクマ(2021年7月撮影)。「雨の中に直立して6メートル先の私を見続ける。歌舞伎『仮名手本忠臣蔵』五段目に出て来る雨に濡れた『斧定九郎』みたいな虚無感と殺気を感じて足がすくんだ」(米田一彦さん)=本人提供

 ひと安心か――、そう考えていた矢先に起こったのが、今回の獣害事件だ。現場は8年前の第1、第2の襲撃現場から望める場所だという。

「過去の教訓を忘れないで」

「8年前、警察や消防はヘリを投入し、現場付近をなめるように飛行して加害グマを捜索した。すると、ヘリの爆音に驚いて子連れの赤毛グマが逃げる姿が目撃されました。人喰いクマが移動することにより、別の場所でも人身被害が発生するのでは、と心配していたら、8年前はその通りになった」

 今回も、捜索のためにヘリが投入された。ヘリに驚いて人喰いグマがすみかを移動すれば、被害が拡散する恐れも出てくる。

 人肉の味を覚えたクマが増え、移動して危険地帯が広がれば、人々がさらされる危険が増える。

「第二の『十和利山事件』には、決して起こってほしくない。どうか、過去の教訓を忘れないでほしい」

 そう、米田さんは訴えている。

日本ツキノワグマ研究所 米田一彦さん

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

タケノコを採取する「採り子」がクマに襲われた=米田一彦提供
左が十和利山。写真中央付近が「十和利山クマ襲撃事件」の第3、第4の事故現場=米田一彦提供
クマによる人身被害が発生した現場付近で対応を協議するハンターや行政職員たち=2024年5月19日
クマによる人身被害が発生した現場付近では、入山禁止にするなど警戒が続いた=2024年5月19日、秋田県鹿角市十和田大湯
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