撮影/写真映像部・東川哲也
撮影/写真映像部・東川哲也

――「私小説」では、ジンと優美の生活の30時間ほどの間に起きた出来事が切り取られている。パニックになって走り回るジンとそれを受け止める優美の姿も、彼らの日常のほんのワンシーンでしかない。だが、その日常の一つ一つに普遍的な愛の尊さがにじみでる。

瀬戸:作品のなかで、「世界の一人一人が優しくなれればな」という言葉が出てきます。世界を見れば、今なお戦争が行われている。でも、自分が誰かに優しくしたり、優しい言葉をかければ、それを受け取った人は優しい気持ちになって、また次の人につながっていくって僕は信じているんです。「自分が行動しても何も変わらない」と思わずに、小さなことからやっていきたいなって、ジンを演じて改めて思いました。

 このドラマは、押し付けがましくもなく、優しく胸に届く作品です。ほっこりする気持ちになっていただけたらうれしいです。

■どの現場にも「なじむ」

――ジンは小説を書くことで、感情を発散させる。瀬戸さんにとっては、芝居こそが抑圧からの解放だという。

瀬戸:「芝居ってストレスがたまりませんか?」と聞かれたことがあるんですけど、僕にとっては発散なんです。怒ったり、泣いたり、こうやってしゃべったりするわけじゃないですか。特殊な役柄は別かもしれないけど、ジンも含めて全部が発散です。もちろん、くたびれたりはしますけど(笑)。

――17歳で上京。芸能界に入って、18年がたった。ドラマや映画、舞台と活躍の幅を広げている。時間をかけて作り上げるものもあれば、一度だけの出会いもある。どの現場でも、「なじむこと」を大切にしている。

瀬戸:僕は自分の個性が何なのかがわからないんですけど、いろんなところになじめるのが個性かなと思っていて。こうして会話をするのも、芝居をするのも、色がどんどん混ざっていくイメージがあります。芝居ってそのときどきの空気みたいなものがあるんですよ。それを自分のなかにも取り入れようと思って現場に入ると、そうなれる。それが僕にとっての「なじむ」です。

 この感覚は、どんな役を演じるときでも変わりません。主演だからといって空気をつくろうと思ったこともなくて。作品や演じるシーンによって空気をつくる人は変わってくるし、「今はこの人の番だ」という感覚もあるんです。

撮影/写真映像部・東川哲也
撮影/写真映像部・東川哲也

 でも、なじめないこともありますよ。「ああ、今日はこの色持ってないな」って。そんなときはもうなじみようがないから、その場での違う過ごし方を考えれば大丈夫です。なじまなきゃいけないと気負っているわけでもないんです。

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