石原さとみは、自ら吉田恵輔監督に出演を直談判したという。映画「ミッシング」で描かれる世界は、どこまでもリアルで息ができなくなるほどに苦しい。AERA2024年5月27日号から。
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―「監督と仕事がしたいんです!」。石原さんが吉田監督に直接申し込んだのは、7年ほど前、出演作のヒットが続いていた時期だ。なにがきっかけだったのだろう。
石原さとみ(以下、石原):自分で「このままだとまずい」って思ったんです。自分が自分に飽きていて、このままじゃ世間からも飽きられてしまうって。この感覚は自分にしかわからないんですよね。
そんなとき、吉田恵輔監督の「さんかく」や「犬猿」などの作品に出合って、衝撃を受けました。周りに「吉田恵輔さんと繋がっていませんか?」って聞きまくりました。
私を変えてほしい
青木崇高(以下、青木):吉田さんがいるバーまでたどり着いたんだよね。
石原:そう。「監督と仕事がしたいんです!」って言って、断られました(笑)。「ちょっとメジャーすぎてイメージがわかない」と言われて。「わかります。でも私を変えてほしいんです。あなたしか変えられないんです。連絡先交換しません?」って。
青木:またグイグイと(笑)。
石原:で、その3年後に来たのがこの「ミッシング」です。
―幼い娘・美羽がいなくなった。悪夢のような状況で娘の帰りを待ち続ける母親の沙織里(石原さとみ)と夫の豊(青木崇高)は、温度差から次第にけんかが絶えなくなっていく──。
石原:4年前、最初に脚本を読んだときは、「いや、沙織里役は私じゃないよね」と思ったんです。でも、吉田監督がこの役をオファーしてくれたのは、きっと私が7年前に「吉田組に出させてください!」と直談判したから。出産を待ってくださって、母親になってから再び脚本を読んだら、今度は怖くて読み進められなかった。
青木:そうでしょうね……。