約500年後に日本人全員の名字が「佐藤」になるという調査結果が公表された(写真/Getty Images)

日本人全員「佐藤」に

 約500年後の2531年、日本人全員の名字が「佐藤」になる──。こんな調査結果が、今年4月に公表された。

「いま、日本で最も多い名字は『佐藤』さんで、全体の約1.5%。このまま選択的夫婦別姓が導入されずに結婚が繰り返されていくと名字の多様性が失われ、将来は佐藤姓だけになるのでは、という仮説のもと調査を始めました」

 こう話すのは、東北大学高齢経済社会研究センターの吉田浩教授。公表データなどを元にみた国内の人口における佐藤姓の占める割合の変化は2022年から23年の1年間で0.83%増加。このまま夫婦同姓のルールが続き、毎年この割合で佐藤姓の占有率が伸びると仮定すると、2531年には100%が「佐藤」になるという。

「逆に選択的夫婦別姓なら、どうなるか。22年に連合が実施した意向調査をもとに『同姓にする夫婦が約4割』と仮定すると、佐藤姓の1年の増加率は0.325%に鈍化。2531年時点でも佐藤姓の占有率は7.96%にとどまるという結果でした」

 少子高齢化の経済学(加齢経済学)が専門の吉田教授。選択的夫婦別姓問題が少子化におよぼす影響を「見える化」したいと調査を実施したという。

「選択的夫婦別姓の実現によって結婚がしやすくなり、また結婚後に姓を変える不便さがなくなることで女性の働きやすさも進み、その結果、共働きが増えて世帯収入が上がるなど個人行動の変容が進めば、次世代以降の出生率も改善されるのではと期待します」

 なぜいまだに選択的夫婦別姓が認められないのか。前出の教員の女性は日本社会、特に政治家や昭和オヤジ世代にはびこる固定観念も一因だと考えている。

「男性と女性の結婚が『正常』だとか、女性は男性の『家』に入って姓を変えるべきとか。でも日本では婚姻数が着実に減り、離婚数は増加している。選択的夫婦別姓や同性婚に反発する保守派のこだわりって、『家制度の維持』だけじゃないかと」

(編集部・小長光哲郎)

AERA 2024年5月27日号より抜粋

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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