ボカロ文化を牽引し、バンドとしても活躍したアーティストwowaka(ヲワカ)が31歳の若さで急逝してから5年。未発表作品も収録した歌詞集「wowaka 歌詞集」が上梓され、改めてその類まれな才能が注目を集めている。
【写真あり】米津玄師からのメッセージが寄せられた歌詞集はこちら
* * *
1987年生まれ、鹿児島県出身のwowakaは、中学、高校の頃からバンド活動をはじめ、東京大学在学中も音楽サークルで活動。さらにボーカロイド(音声合成ソフト)に興味を持ち、2009年5月にニコニコ動画に「グレーゾーンにて。」の動画を公開。ボカロPとしてのキャリアもスタートさせた。
「裏表ラバーズ」「ワールズエンド・ダンスホール」などの楽曲によって、10年代初めのボカロ文化を代表する存在となった彼は、ネットシーンで交流があったミュージシャンとともに2011年にバンドを結成し、翌年から“ヒトリエ”として活動。バンドシーンでも順調な活動を続けてきたが、2019年4月、バンドの全国ツアー最中に急性心不全のため急逝した。
ロックシーンとインターネット文化をつなぐ存在
wowakaが現在の日本の音楽シーンに与えた影響はきわめて大きい。まずはボカロPとしての功績。緻密に構築されたサウンド、鋭さとキャッチ―さを併せ持ったメロディー、リアルな感情と創造性豊かな世界観を合わせた歌詞など、彼の楽曲の特徴は多くのクリエイターに多大な影響を与え続けているのだ。livetune(kz)、DECO*27、ハチ(米津玄師)などとともに10年代のボカロシーンを牽引し、“ボカロらしさ”を確立したアーティストの一人と言えるだろう。
ロックバンド・ヒトリエがもたらしたインパクトについても記しておきたい。wowakaがネットを介してメンバーを集めたこのバンドは、ボカロとロックという当時はまったく別物とされていたシーンを結びつけるきっかけとなった。2010年代前半、ボカロPやボカロ楽曲に対する評価は定まっておらず、“一部のオタクが盛り上がっている音楽”といううがった見方もあったし、ヒトリエが活動をスタートした当初は「ボカロPがなんでバンドを?」という声も少なからずあったと記憶している。