世界中から注目を集める合唱団ゆえ、少年たちの出身国は欧州にとどまらない。近年では、日本を含めアジア出身者も少なくないという。
今回の来日メンバーのひとりソウマ君(14)は日本出身。ウィーン少年合唱団の来日公演に足を運んだ時、歌声に感激したのがきっかけでオーディションを受け、合格。9歳の時、単身でオーストリアに渡った。
「ドイツ語には1年くらいで慣れました。家が近いメンバーは週末には帰宅します。僕は他の外国出身者と残り、寮の先生たちと映画に行ったり遊びに行ったりと工夫しながら過ごしています」(ソウマ君)
シュテッヒさんは言う。
「(出身国が違っても)音楽が私たちを結びつけています。子どもたちは互いによく助け合っています。いろいろな国の歌を歌うので、発音を教えてもらえて便利ですよ(笑)」
合唱通じて異文化理解
合唱を通し、異文化との交流や理解も進むようで、オーストリア出身のヨナタン君(14)は、日本のサブカルが大好きだ。
「今回の日本ツアーはワクワクすることばかりです。『ワンピース』など日本の漫画が大好きなんです」
卒団後は、全員が音楽家になるわけではなく、それぞれが夢に向かって進んでいくという。
「音楽を愛する子どもはぜひ合唱をやるべきです。歌うことは楽しいこと、音楽は楽しいことだと皆さんに伝えたいです」
シュテッヒさんの言葉にグッと力がこもった瞬間だった。(ライター・千葉望)
※AERA 2024年5月27日号