日本カスタマーハラスメント対応協会代表:島田恭子(しまだ・きょうこ)/東京大学大学院医学系研究科で予防医学・メンタルへルスを研究。保健学博士・公衆衛生学修士(写真:本人提供)

小山田:女性がカスハラ被害を受けやすい現実は否めません。旅客ハンドリング業務は女性比率が89%(国土交通省調べ)を占め、カスハラ被害の報告が最も多い部門である一方、男性が82%(同)を占める、手荷物や貨物の出し入れを行うランプハンドリング業務では少ないのが実情です。旅客ハンドリング業務にカスハラが集中してしまう背景として、お客様との接点が多い点に加え、サービス内容にも起因していると思います。航空機の遅延や欠航はどうしても一定の頻度で起きてしまいます。その都度、最前線で顧客対応を担う旅客スタッフはカスハラを受けやすい傾向にあります。私自身、旅客部門で長く働いてきましたが、フライトイレギュラーに起因したクレームに何時間も対応した経験があります。

島田:昔から「悪質クレーム」という言葉はあり、組織はその対応に苦慮していました。そこから昨今の急速なデジタル化やSNSでの匿名化と、社会経済状況の悪化が相まって社会の不寛容さやイライラの種が増しています。私はもともと働く人のメンタルヘルスやストレス科学を専門にしていたのですが、近年特に、顧客対応する方々のメンタルヘルス対策に携わる機会が増え、その被害の甚大さに衝撃を受けました。そこで仲間と共に接客業・対人援助職のメンタルケア・ハラスメント対策に特化した活動を始めようと、3年前に協会を設立しました。カスハラ対策を入り口に、従業員のエンゲージメント向上、組織の活性化を目指す取り組みを支援しています。

従業員をいかに守るか、問われる事業者の能力

小山田:カスハラが顕在化している背景として、インバウンドの増加やLCC(格安航空会社)の参入などで航空機を利用されるお客様がどんどん多様化しているのに伴って、航空サービスに対するニーズも多様化し、過去と比べてクレームの内容の幅も広がっていることも挙げられます。また、SNSの普及によってクレーム件数が格段に増え、航空会社もより敏感になっている面はあると思います。航空機は公共交通機関の中でも高額の運賃をお支払いいただいていることもあり、非日常的な感覚も相まって質の高いサービスや特別感を要望される面は以前からありますが、それはお客様が多様化しても変わらない、と実感しています。

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