カスハラを防ぐ手立ては三つあると考えています。一つは、未然防止の観点でカスハラが起きる要因への対応です。空港では搭乗手続きや手荷物検査、搭乗ゲートなどで、締め切り時刻に間に合わず、クレームから発展してカスハラにつながることがまれにあります。それを防ぐには例えば、締め切り時刻や遅延・欠航のご案内をよりきめ細かく、分かりやすくするなど仕組みから工夫していく必要があり、その点で航空会社との協力が不可欠です。2点目は、カスハラを受けたスタッフのケアです。これは事業者側のマネジメント能力が問われます。スタッフを守る姿勢や個々のマネジメントスキルを育てていく必要があります。3点目は、さきほどもカスハラの具体例でお伝えしましたが、航空会社など上の立場に立つ側から与える心理的プレッシャーに関してです。メンタルダメージを受けて離職や働けなくなってしまうケースもあります。問題解決には事業者だけでなく、関係者との連携が重要であり、共に心理的安全性の高い職場環境を整えることが大切だと思っています。

島田:カスハラが起こる背景には、複合的な要因が絡んでいます。お客様の属性(攻撃性、疾病等)、飲酒の有無、心理状態などに加え、対応者の経験や特性、お店などの利便性、環境的な問題、ひいては社会情勢なども関連しています。お客様も最初からカスハラをしようと思って来るわけではありませんし、多くの対応者は日々、サービス向上のために努力しているでしょう。目を向けるといいのはまず、カスハラが起こるきっかけ(トリガー)を減らす取り組みや、組織のトップの意識改革です。成熟したお客様との対等な関係を目指すことで、安易にお客様をカスハラの加害者にしない仕組みを確立できると考えています。

小山田:そうですね。カスハラは勤務経験の長い人の多くが経験していると思います。これまでは現場で働く人だけに我慢を強いてきた面が否めませんが、これからは組織として、非常識な行為には毅然と対応できるようバックアップし、従業員へのアフターケアにもしっかり取り組むことが非常に大切だと考えています。カスハラ対応に関する社会的合意を得やすい環境も整いつつあるように感じます。従業員を守る体制に事業者によって温度差が出ないよう業界全体で取り組みを強化していきます。

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