──カスハラが深刻化していく中で、「お客様は神様」という感覚は見直されつつあるように感じますが、その一方で顧客の声を拾いながら業務の改善にどう反映させていくか、カスハラ対策とサービス向上の兼ね合いは難しいのではとも思います。

小山田:先にも触れた通り、遅延や欠航でご迷惑をおかけしたことがきっかけで傾聴する機会が多いのが実情です。お客様からの改善要望やご意見には真摯に耳を傾けていく姿勢はこれまでも、そしてこれからも変わりません。一方で、過度な要求や非常識な行為については組織的に毅然と対応していきます。従業員の心理的安全性を高めるのは絶対に必要です。そのために業界を挙げて取り組んでいかなければ、と考えています。

島田:カスハラとお客様の良質な声(ご意見・クレーム)を明確に区別する必要があります。今回、対応ガイドラインを策定することで、耳を傾けるべき「お客様の声」と「カスハラ対応」を区別できるよう整理し、対応者やリーダーの方々の行動指針のヒントを提示させていただくのが私たちの役割だと考えています。「お客様は神様」ではなく、お互いが敬意と尊厳を持って対人関係を紡ぎ合う「お互い様」の関係。そんな成熟した市民が主流となる次世代に向けて、私たち一人一人が変化を起こせる立場にいます。今回の我々の取り組みは、そんな「お互い様の関係」に確実に近づく第一歩になる、とワクワクしています。

■プロフィール

小山田亜希子(おやまだ・あきこ)/ANAエアポートサービス社長などを経て、全日本空輸の上席執行役員、オペレーションサポートセンター長

島田恭子(しまだ・きょうこ)/東京大学大学院医学系研究科で予防医学・メンタルへルスを研究。保健学博士・公衆衛生学修士・精神保健福祉士

(構成/編集部・渡辺豪)

AERA 2024年5月20日号

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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