それを示すのが5日発表のJNNの世論調査である。そこでは次回衆院選で「立憲などによる政権交代」を望む回答が、政権継続を望む声を上回り48%となった。

 厳しい世論の表れと考えられるが、問題は同時に岸田内閣の支持率も7ポイント上昇していることだ。理解に苦しむとの声が多いが、むしろこの矛盾こそいま政治が直面する困難を表している。抽象的には政権交代しかないと感じても、具体的には自民以外の選択肢が思い浮かばない。それが多くの国民の感覚なのではないか。

 裏返せば、国民は本気の選択肢の出現を待望している。いま野党に求められているのは、55年体制を彷彿とさせる「お灸を据える」役割ではない。現実の政権交代の緊張感である。それだけが政治とカネの問題を解消できる。

 補選全勝を受けて、立憲と共産の「野党共闘」が復活しつつある。目の前の選挙戦略としては妥当かもしれない。しかし共産を入れた政権が現実に運営可能だろうか。いま本当に必要なのは、自民に批判的な中道勢力の再結集だろう。

 前述の調査では立憲の支持率は10%強。4ポイントを超える急上昇だ。しかし2009年の政権交代前夜、民主党の支持率はじつに3割を超えていた。風に浮かれてはならない。

AERA 2024年5月20日号

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東浩紀

東浩紀

東浩紀(あずま・ひろき)/1971年、東京都生まれ。批評家・作家。株式会社ゲンロン取締役。東京大学大学院博士課程修了。専門は現代思想、表象文化論、情報社会論。93年に批評家としてデビュー、東京工業大学特任教授、早稲田大学教授など歴任のうえ現職。著書に『動物化するポストモダン』『一般意志2・0』『観光客の哲学』など多数

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