現在、サイゼリヤは海外も含めて1500店舗以上を展開しています。もし1号店が「商売に向いている立地」だったら、どうなっていたでしょうか?
街場のレストランで終わっていたかもしれません。普通の料理を出していても、立地が良ければお客様は来ますから、工夫も改善も必要がないのです。
母が何度も指摘してくれたように、商売に向いていない立地に店を出したことは、偶然とはいえ非常にラッキーだった。ようやく、そう気づけたのです。
とはいえ、現状「さしておいしくないメニュー」を、劇的においしくするのは至難の業でした。でも、私にすぐできることがありました。
自分中心をやめることが「成功の近道」
それは値下げです。お客様は1円でも安いほうがうれしいに決まっています。
最初は、まず全体的に価格を3割下げました。しかし、客足は変わりません。
次に、5割引きに踏み切りました。つまり半額セールです。それでも、お客様の数は増えません。
そこで、お客様に来ていただきたい一心で、7割引きにしたところ、突然お客様が殺到し始めたのです。
客数でいうと、それまでが1日5~10人だったのが、7割引きにしてからは1日なんと約500人。7割引きセールは、当時は大赤字でした。それはまさに文字通り、採算度外視の出血大サービスだったのです。
ですが、新規のお客様が増え、リピーターになってくださる方も増え、徐々に粗利が出てくるようになると、経営も安定するようになりました。
私たちの頭の中に浮かぶ考えは、だいたい「自分中心」のもの。それをやめるためには、いったんその考えを逆にしてみると、真実に近づけます。優秀だと思っていた自分は、実はまだまだ力不足なのかもしれない。最悪だと思っていたあの人は、実は私にとって最高かもしれない。