(パックン)私はリタイアして何もせずのんびり過ごすなんて、できない。
働いてお金をもらって、あなたの貢献を認めるよって言われたほうが幸せだから。
ちっちゃいことでもいいからね。レストランでお皿洗いでもしたいです。いつも家では無償でピッカピカに洗ってるし(笑)。
(エミン)家族はパックンのお皿への貢献を認めているはず(笑)。
(パックン)20〜30代にがむしゃらに働いて、ある程度は節約して、浮いたお金を投資して放置。
エミンさんが言うように会社への依存度を下げ、自分の自由度を上げると安心して転職も考えられるね。
精神的にリラックスした状態まで持っていければ、人生も豊かになるんですよ。だから、僕は自分の理想として、FIREのRをリラックスに置き換えています。
――お二人は、お金に困った経験は?
(エミン)学生のときはお金がなかったよ。トルコ(エミンさんの母国)とは経済力が全然違う日本に来ているわけだし。
1カ月3万4000円の寮で暮らして、日本橋の髙島屋でアルバイトをしたよ。
ドライイチジクを売って「便秘にすごく効きますよ。便秘薬より効かなかったらお金返すよ」って(笑)。おもしろがって寄ってくるマダムたちに試食させていました。
(パックン)日本に来たのは何年?
(エミン)1997年。
(パックン)その頃、私は新宿の伊勢丹で化粧品サンプルを配ってました。ノルマはなくて、1日配っただけで1万5000円。
歩合制だったらエミンさんのほうが儲けてたと思いますよ。営業、うまそう。
(エミン)学生時代はどうだったの?
(パックン)苦学生でした。新聞配達を10歳から18歳まで毎朝やって、母と二人で生計を立てていましたが、幸せだった。
私は貧乏な経験があったほうが豊かになれると思う。お金の価値を理解しているし、稼ぐ野心も身につく。
(エミン)それ、よくわかる。
(パックン)今アメリカで「ウェルシー・プア(Wealthy Poor)」っていう言葉がはやってるのね。「資産のある貧乏」みたいな意味。
ある程度のお金はあるんだけど、キャッシュフローがマイナスだから次の給料まで生活費が残るか心配な人のことです。
でっかい家のローン返済を毎月。でっかい車に乗っているから維持費も高い。子どもの私立学校の学費も重い。
日本円でいえば1000万円の手取りがあっても、ぜいたくな暮らしに全部持っていかれてる状態。
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