「ほんまのところで言うと、もともと漫才っていうのはたしか音曲の伝統芸能的なところから始まったみたいなもんで……」(鰻)
「何の話してんねん」(橋本)
「河内音頭とかの上方演芸の流れもありますし、ルーツ的な視点からすると、何をもって『正統派』とするのか」(鰻)
「ええねん、そこまでは。せめてエンタツ・アチャコ師匠からのしゃべくり漫才の歴史で語れ。そもそも今回の全国ツアーの話からだいぶそれてしまってるで」(橋本)
「まあ、僕らはしゃべくり漫才のほうが好きってことなんです」(鰻)
インタビュー中に目の前で繰り広げられる二人の掛け合い、それがもうそのまま即興のしゃべくり漫才のように見えてくる。即興漫才(?)はつづく。
「実際、『ほなやってみよか』で役に入って始まるコント漫才は、僕らほとんどやらないですしね」(橋本)
「コントというものが、あまり得意じゃないというか、自分の言葉でしゃべるほうが楽しい」(鰻)
「コントやコント漫才、役を演じないという部分で『正統派』とされるのかもしれないですね。漫才のネタの間で、しゃべくりの場合は途中のチェックポイントや最終的なゴールは決まっているけれど、どのルートから行ってもいい。役や設定が決まったコント漫才ではなかなかできない、そういうふうに漫才が動く感じが好きというか向いてる」(橋本)
全国ツアーには、まさに“炊き立て”、すべて新ネタのしゃべくり漫才でのぞむ。
「11月までまわっていきますから、ツアーの途中でさらに新ネタができてきたり、2公演やる予定の東京・大阪も違うネタになることだってありますから、両方見たほうがええかもしれませんし。まずは楽しみにしといてほしいですね」(鰻)
「来年20周年、漫才師として脂の乗ってる一番いい時期の漫才を、ぜひ見ていただければ」(橋本)
2024年の銀シャリ単独全国ツアーを見たと将来自慢できる、そんなものを、しゃべくり漫才で届けたい。そう語る漫才師としての矜持は、やはり「正統派」かもしれない。
(ライター・太田サトル)
※AERAオンライン限定記事