短期間の留学ではなく、学位取得のために海外大学に挑戦する若者たちが増えてきた。とはいえ、海外大学進学は学力トップ層が目指すイメージがあるだけに、学力が“そこそこ”という場合には意味があるのだろうか。AERA 2024年4月22日号より。
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広がりつつある海外大学受験。だが、その情報は、エージェントが多くある都市部の方が手に入れやすい。こうした情報格差と教育格差を埋めるため、海外大学への進学を目指す生徒を支えることに力を入れる自治体がある。
熊本県は2013年、蒲島郁夫知事(24年4月15日退任)の肝いりで「海外チャレンジ塾」を開講、海外大学進学を目指す中学生や高校生を募って無料の講座を実施。この10年で47人の海外大学進学者を生み出した。
海外大学進学のスペシャリストからTOEFLや英文エッセイ対策などの指導が受けられるほか、出願書類に関してのアドバイスも行っている。
また、世界トップ50位以内の海外大学に進学する学生には、県独自の給付型奨学金100万円を用意。これまでに9人がこの奨学金を手に世界へと飛び立ったという。同県職員で同塾のプロジェクトを担当する西浦浩子さんは、
「県立高校からの進学者も多く、ワシントン大学やスタンフォード大学、トロント大学といった世界トップクラスの大学に進学する人が出ています。中にはジョージア工科大学で学び、大学院でハーバードに進む学生も出てきました。子どもたちよりも、親が治安や費用は大丈夫なのかと、海外大学進学に慎重な考えの人が多いので、プログラムの卒業生との交流会には保護者も参加できるようにして、安心してもらえるように努めています」
と語る。
今年度からは中学生を対象にした「グローバル人材育成講座」と高校生を対象にした「海外進学コース」に分けて募集する予定という。
学力そこそこでも意味
海外への夢が広がるが、とはいえ、ハーバード大学を目指すような学力トップ層の子どもは国内でも一握りだ。
では、学力が“そこそこ”という場合に、海外大学進学は意味があるのか。
「もちろん意味はある」
と答えるのは『東大よりも世界に近い学校』の著者で、活育財団共同代表の日野田直彦さんだ。