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 社内の親睦の場といえば、以前は「飲みニケーション」だったが、新型コロナが落ち着いても、4割近い企業が忘・新年会を再開していない。AERA 2024年4月15日号より。

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 毎日出社し、直接顔を合わせてミーティング。作業の合間や休憩中にも雑談し、ときには皆と飲みに行く──。そんな社内コミュニケーションの姿は、コロナ禍をまたいだこの4年間で大きく変容した。オンラインでの打ち合わせが当たり前になり、今もフルリモート体制を継続する企業も少なくない。「同じ部署の同僚と、ほとんどリアルで顔を合わせたことがない」という話はもはや、珍しくなくなった。記者自身、以前は週4回は顔を出していた編集部に、今年はまだ1度しか行っていない。

6割が職場飲み会ナシ

 職場での「飲み会離れ」も進んでいる。日本生命が昨年10月、約1万人を対象に行ったインターネットアンケートでは、「今年度、職場の方との“飲みニケーション”はありましたか?」との問いに66.0%が「あまりなかった」「なかった」と回答した。また、半数超の人が職場での飲みニケーションを「不要」「どちらかといえば不要」としている。

 企業主導の忘年会・新年会についても実施をやめる企業が多い。東京商工リサーチが昨年10月に行った調査では、コロナ禍前の2019年末の忘年会または20年初の新年会を実施した企業2760社のうち、1039社が23年末の忘年会や24年初の新年会を実施しない予定と回答した。4割近い企業がコロナ禍前は開催していた忘年会・新年会を取りやめたことになる。

 都内にある従業員60人ほどの会社の総務担当者はこう話す。

「19年までは全社員が一堂に会する忘年会を毎年実施していました。以前から飲み会を嫌がる社員はいたかもしれませんが、そうした声はほとんど聞こえませんでした。ただ、コロナ禍の3年間取りやめていた影響か、『なくても困らない』『参加したくない』という声が増えてきて、23年も実施を見送りました。社員同士で飲みに行く機会もかなり減ったように感じます」

 この担当者は反省を口にする。

「恥ずかしい話ですが、忘年会が単に『酒を飲んで楽しむ場』になっていて、何のためにやるのか、どんな場にするのかを十分に議論できていなかった。コロナによって不要論を聞くようになりましたが、それは飲み会そのものが悪いというよりも、うちの忘年会が昔からなくても困らない会だったのだと思います」

(編集部・川口穣)

AERA 2024年4月15日号より抜粋

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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