離党勧告の処分を受け、記者団の取材に応じる世耕氏

「いつ選挙になってもおかしくない雰囲気です」。和歌山県内の首長はそう語る。県内の自民党議員を牽引してきた2人の重鎮が相次いで裏金問題の責任を取ることになった和歌山。早くも県内政界の再編が始動している。

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 4月4日、自民党は裏金事件を受けて安倍派、二階派計39人の処分を発表。安倍派幹部で参院議員の世耕弘成前参院幹事長を離党勧告とした。世耕氏は即日、これを受け入れて離党届を提出、「無所属」となった。

 一方、これに先立ち、二階俊博元幹事長も3月25日、裏金問題の責任を取り、次の解散総選挙には出馬しない「政界引退」を表明していた。

無所属で衆院選へ?

 翌5日。世耕氏の地元、和歌山では、世耕氏の今後の身の振り方を伝えるニュースが流れた。「世耕氏が参院から衆院に鞍替えし、無所属で出馬の意向」。和歌山県の政治情勢は、長く二階俊博元幹事長が牛耳ってきた。そこへ、近年は世耕氏が経産相、参院幹事長と要職につくことで頭角を現わし、和歌山県の自民党は二階氏vs.世耕氏という構図となってきた。

 参院議員として当選5回を重ねる世耕氏は、これまで何度も衆院への転身を噂されてきた。その際に、ターゲットに上がっていたのは現在の和歌山3区、二階氏の地盤だ。「2021年の衆院選では、直前まで二階氏と争う覚悟で準備していた。最後に思いとどまった」と世耕氏の支援者は打ち明ける。裏金問題で2人が一度に「失脚」してしまい、県政界は混迷を極めているのである。

 衆院鞍替えのニュースは、世耕氏側が飛ばしたアドバルーンだったのではないかという見方がある。

「まず、参院から衆院転身の情報を流して二階氏陣営の動きを見ようとしたのでしょう。最初は支援者へ挨拶まわりにくるらしいという話だったが、実際には来なかった」(前出・世耕氏の支援者)

 次の衆院選では、定数を人口に応じて増減させる「アダムズ方式」を初適用し、15都県で選挙区が「10増10減」となる。和歌山は3から2に減る。世耕氏が狙うとみられるのは新しい和歌山2区。ここは自民党県連がすでに二階氏を支部長にと決めていた。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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まさかの離党勧告。そのわけは?