岸田文雄首相と面会後、取材に応じる日本銀行の植田和男総裁=3月19日午後6時、首相官邸

 日銀がついにマイナス金利を解除した。政策金利で久しぶりのプラス金利の登場だ。預貯金や住宅ローンの金利はどうなるのか。AERA 2024年4月8日号より。

【図表】26年度に金利はどこまで上がる?

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 普通の生活者が金利を実感し始めたのは昨年秋からだろう。

 2023年11月、メガバンクの先頭を切って三菱UFJ銀行が、10年定期の金利を0.002%から100倍の「0.2%」に引き上げた。

「お申し込み状況は想定以上でした。1日あたり金利引き上げ前の数倍から数十倍のお申し込みをいただきました」(同行広報部)

 年が明けると今度は日本生命が一時払い終身保険の予定利率を0.6%から「1%」に上げた。こちらも反応は上々だった。

「2カ月半で前年比300%超の約6万5千件の契約を獲得しました。約3割が新規のお客さまです」(同社広報部)

 預貯金など元本確保型商品に「うま味」がなかった期間が長かったためか、誰しも金利の変化には敏感だ。

家計と金利の関係

 これらは一昨年暮れから日銀が容認し始めた長期金利の上昇を受けたものだが、ここに来て日銀はもう一段の大きな政策変更に動いた。3月19日、「マイナス金利」を解除し政策金利を「0~0.1%」にするとしたのだ。日銀の金融調節の本丸である短期金利でも利上げを行い、13年から続いた「異次元緩和」に終止符を打った。政策金利の利上げは実に17年ぶりである。

 日銀は今回の政策変更を、賃金上昇と物価上昇の好循環が見込まれたからとしている。これは日本経済が自律的に成長し始めている証拠ともいえ、となると金利は今後、着実に上昇してもおかしくないことになる。

 家計にとって「金利」とは何か。冒頭の預貯金などを通した「もらえる利息」があるが、住宅ローンなど、資金を借りた場合に払わなければならない「支払う金利」もある。金利上昇は「もらえる利息」については家計にプラスだが、逆に「支払う金利」は利息が増えるぶんマイナスだ。家計にとって金利が上昇するかどうかは一大事なのだ。

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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