ドジャースでの新しいシーズンが始まった大谷翔平。その人気が留まることを知らない。ゆかりの地である岩手県に訪れる人も増えているという。AERA 2024年4月1日号より。
【写真】奥州市伝統産業会館に設置されている大谷選手の実物大の握手像
* * *
大谷翔平選手の出身地、岩手県に目を向けよう。奥州市水沢は、南部鉄器が代表的な地場産業。奥州市伝統産業会館には南部鉄器の資料や古今の秀作鋳物が展示されているが、大谷選手ファンの聖地の一つでもある。
「2017年から、大谷選手の実物大の握手像を設置しています」(水沢鋳物工業協同組合・戸田努事務局長)
南部鉄器の鋳造技術を用いた真鍮製で、大谷選手が北海道日本ハムファイターズ在籍時、優勝を機に企画。球団の了承を得て千葉・鎌ケ谷の練習場まで出向き、大谷選手の右手を3Dスキャナーで測定、組合と市で作製した。現在は、大谷選手の直筆サイン入りグッズも複数展示されている。
「WBC以降は、訪れる方が前年比で2倍以上。女性同士で来るお客さんも多い。当館は資料館なので、大谷選手目的であっても、南部鉄器についても知ってもらえれば。お陰様で、併設する売店の売り上げも伸びています」(同)
岩手県岩泉町は酪農が基幹産業。ここで採れた新鮮な生乳を原料に、低温長時間発酵で作られているのが岩泉ヨーグルトだ。「ある日、通販の売り上げが、急に通常の7倍くらいに伸びたんです」と言うのは岩泉ヨーグルトを製造販売する岩泉ホールディングス広報担当の坂下裕一さん。何があったのか調べたがすぐにはわからず、情報は取引先からもたらされた。大谷選手が雑誌のインタビューで岩手の名物を尋ねられ「一番のオススメは岩泉ヨーグルトです。本当に美味しくて、僕は世界一だと思っています」と答えたのだ。
「若い女性のお客様が増えましたね。置いているスーパーはいくつかあるんですが、容器が特徴的でヨーグルトと認識されづらいようで、『どこで買えますか』というお問い合わせをよくいただきます」(坂下さん)
飾ってある大谷選手グッズ約200点。奥州市にある美容院「Seems hair & spa」の話だ。オーナーの菅野広宣さんは地元の私設ファンクラブ会長。大谷選手の野球への取り組み方はスタッフ教育に生かせるところが多々あると言う。
「黙々とトレーニングしスキルを上げていく。地味な努力を重ねてこそ、目標や夢を達成できる。大谷選手のエピソードを交え、スタッフに話をすることは多い。13年前に独立して以来、業績が落ちたことはありません」(菅野さん)
(ライター・羽根田真智)
※AERA 2024年4月1日号より抜粋