特別な思い抱いた卒園式

 その時に実感したのは、息子が入園できなかったのは先生方に悪気があった訳ではなく、「社会的な環境」が要因だったことです。そして受け入れ可能となった背景には、幼稚園側だけの理由ではなく、それまでの1年半ほどの間に息子が何とか歩けるようになったり、プリスクールで付き添いなしで生活できたことなど息子の成長も複雑に絡んでいることが分かりました。

 入園後も息子にはできることとできないことがありましたが、先生や周りのお友達に助けられながらすべての行事に参加し、卒園する頃には、息子よりも私が卒園したくないと思うほど、この幼稚園が大好きになっていました。今思い返しても、3人の子どもたちそれぞれの卒園・卒業の中で、息子の卒園式には特別な思い出が深く残っています。

きょうだい児の次女は

 そして、当時、私のメンタルの不調に振り回されたのが「きょうだい児」である次女だったと思います。次女は人見知りで臆病な性格でしたが、どうしても次女まで手がまわらず寂しい思いや理不尽な思いをたくさんさせてしまったと思います。その頃の私には「きょうだい児支援」という概念がなく、障害のある長女や息子のケアを優先していました。この環境が次女にどう影響したのかは分かりませんが、高校2年生になった今は、いつも冷静で一歩引いて全体を見ているようなクールな面と、積極的に委員会活動をするしっかりした面を併せ持っているようです。

 次女も息子もこの学校で10年以上過ごす中でたくさんの成長を見せてくれました。我が家に限らず、子どもの成長は大人の想定を超えることもありますね。子どもの持つ伸びしろを常に応援する親でありたいと、今回出席した卒園・卒業式のたびに思いました。

 来年はいよいよ次女が高校を卒業します。彼女の選択を最大限サポートする1年にしていきたいと思っています。

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江利川ちひろ

江利川ちひろ

江利川ちひろ(えりかわ・ちひろ)/1975年生まれ。NPO法人かるがもCPキッズ(脳性まひの子どもとパパママの会)代表理事、ソーシャルワーカー。双子の姉妹と年子の弟の母。長女は重症心身障害児、長男は軽度肢体不自由児。2011年、長男を米国ハワイ州のプリスクールへ入園させたことがきっかけでインクルーシブ教育と家族支援の重要性を知り、大学でソーシャルワーク(社会福祉学)を学ぶ。

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