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 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は「セックスを買う」のが「あたりまえ」の特異な空気と、「性的なモラル」が桁はずれに頽廃した日本の「没落」について。

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「日本はいま危険な状態にある」

 という一文ではじまる森嶋通夫さんの『なぜ日本は没落するか』は、1999年に半世紀後の日本(2050年)を見据えた社会評論として出版された。「精神の荒廃」「金融の荒廃」「産業の荒廃」「教育の荒廃」……全ての局面においてこの国が「世界から相手にされない国」になっていく過程が予測される本書は、「驚くほど現在の日本がおかれた状況を予見している」とされ、今、多くの人に読まれている。さまざまな気づきがある本書で、森嶋さんが性についてこう記しているのが興味深かった。

「(今の日本人は)肉欲に関しては強い刺激を受けている。殆どの先進国で日本と似たような現象が見られるのは事実だが、一九九六年一二月の『ニューズウィーク』が指摘しているように、日本では性的なモラルが他国より桁はずれに頽廃(たいはい)していると見てよいであろう」

 森嶋さんのいう「性的なモラル」は、当時社会問題になっていた“エンコーする女性”の性モラルであり、そういう点で森嶋さんも男性としての限界があるのだが、10代女性の下着を買う成人男性が珍しくなかったのが、あの時代、だった。そしてそういう日本の現実は、ニューズウィークに指摘されるほどに特異で異様な「頽廃」だったのだ。

 先日、海外の知人に「こんなデータが出てるよ」と教えてもらった日本の性事情の調査は、ちょっとショッキングだった。今の20〜40代、セックスレス率が高く性の満足度は低いのだけれど、「商業的性サービスを利用したことがあるは男性」で48%、女性では4%だという。この数字は、他国の調査と比べてかなり高い。たとえばイギリスでは「過去5年間に買春したか」という調査で、「ある」と答えた男性は3~5%(世代によってばらつきがあるそうです)で、デンマークの15〜29歳の男性に「過去に買春したことがあるか」と聞いた調査では10%が「ある」、ドイツでは調査に参加した男性の27%が買春経験があるとのこと。ちなみに女性はどの国もほとんどいない……。

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