東大寺学園。毎年8月の夏休みの期間には、高校2年生の希望者を対象に英オックスフォード大への短期留学を実施している(写真/同校提供)

 東大京大の合格者高校ランキングには例年、首都圏や大阪、京都、兵庫といった大都市の高校が並ぶ。そのなかで毎年上位に食い込むのが東大寺学園。西大和学園と並んで奈良県の合格実績を引っ張る。

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 東大寺学園は今年、東大35人(昨年は18人)、京大70人(昨年は63人)と多くの合格者を送り出した。

 1926年創立(当時は金鐘中等学校)と1世紀近い歴史を持つ、関西を代表する中高一貫の男子校。昨春の京大への現役進学率は24.1%と全国トップ。その校風は自由でおおらかだ。進路指導担当の沖浦徹二教諭はこう話す。

「縛りつけるような教育では自ら考える力が育ちませんし、校則も制服もなく生徒たちには自由に過ごしてもらっています。赤髪や金髪の生徒もいますし、勉強や課外活動をしっかりしていれば、外見で判断するということはしないという考えです」

 カリキュラムの進度が特段早いということもなく、のびのびとした学校生活が優先される。見聞を広めるための行事も活発で、中学、高校を通して落語や文楽といった伝統芸能を鑑賞。高校の修学旅行の行き先は生徒たちの投票で決める。重んじるのは自主性だ。

「いろんな経験をさせるということが大事で、失敗したり試行錯誤したりしながら学んでいく。勉学というよりも人間形成の場であると考えます。自分たちで決めて責任を持って行動するという姿勢は何事においても重要で、それが大学受験にもつながると信じています」

 部活動への積極的な取り組みにも肯定的だ。教員から受験勉強に向かうよう切り替えを主導することはなく、引退時期は生徒の判断に任されている。

「先輩の姿を見てきて、多くの生徒が高校2年の秋には引退します。その頃にはそろそろ受験生としてのふるまいをしようかなと、生徒の中に自然とそういう意識が芽生える空気感が醸成されています。もちろん、高校3年まで続ける生徒もいますし、そういう生徒は意識も高いので、勉強と部活動の両立もうまく、合格率も高いです」

 例年、東大合格者に比べ京大合格者の方が多い傾向だが、進路指導において誘導することはないという。

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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