30代後半の妹(左)、兄(右)のMRI画像。「類似性が見られる場合もありますが兄妹の性格は違います。脳の形が違えば、同じ脳の使い方にはならず、一人ひとりの性格が異なるのは至極当たり前ということです」と加藤医師

「自分の性格」は世界で一つしかなく、それは人生における選択や成長とともに変わるものなのだという。つまり加藤医師によれば、脳の使い方を変えることで「神経質」「気にしすぎ」といった性格を変えることは十分に可能だ。しかし、その前に脳の働きを大きく阻害する要因を取り除かなくてはならない。酸素の欠乏と睡眠不足である。

「脳に酸素が十分に行き渡らなければ当然イライラしやすくなり、集中力が低下します。鼻炎や花粉症などにより炎症を起こし、鼻の気道が狭くなったことで十分な息を吸えていない人はとても多い。鼻の通りが悪いと息苦しさから脳が覚醒を繰り返し、不眠にもつながります。鼻の通りを良くし、質の高い睡眠を得ること。人の寛容さはこれだけで大きく変わります」

 花粉症と不眠症は今や国民病であり、疲労感や倦怠(けんたい)感が抜けない状態が“通常”となってしまっている人は少なくない。この状態が続くと肉体的にも精神的にも意欲が低下し、QOL(生活の質)が大きく損なわれる。これは日本から「寛容さ」が失われたこととも無関係ではないだろう。性格を変えたいならまずは体の不調を治すこと、と加藤医師は指摘する。

性格とは自分の手で作っていくもの

 だが、「人の性格は絶えず変わるもの」と考えると、不思議なことがある。同窓会などで旧友と再会したとき、「見た目は成長したけど中身はあのころのままだ」「根っこの部分は変わっていない」と感じるのはなぜなのだろうか。

「『変わっていない』と感じるのは、ある種のバイアスがかかっているからです。なぜなら、学生時代における同じ体験の共有しかしていないから。当然、成長につれて学生時代とは違う側面を備えたはずですが、その過程は知らず、変わった部分の記憶は保持されていないので、認知できないということです。他人から見た『性格』は多くの場合、そうしたバイアスがかかっていると言えるでしょう」

「昔から変わらない部分」を好意的に捉えるのは親近感の表れでもある。確かに同級生をよく観察すれば変わらない部分よりも変わった部分のほうが多いはずだが、「都合の良い側面しか見ていない」のが本音なのかもしれない。

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性格とは脳に蓄積されたデータの集合体