「エストロゲンの働きの一つが腫れや炎症の抑制です。エストロゲンの減少で、指の関節周囲や腱、腱鞘周囲などに存在する滑膜が腫れ、こわばりやしびれ、痛みが生じる。それが長期間続くと軟骨が削れ、手指が変形する」(平瀬センター長)
28歳の娘の場合、妊娠・出産でエストロゲンが一時的に減少。更年期の母親と同じ症状が出た。
VRで月経痛を体感
「エストロゲン減少による不調には、ホルモン補充療法が最も効果が高いが、より手軽で安全な対策として、エストロゲンと似た働きをするエクオールの摂取を勧める医師も多い。大豆イソフラボンから腸内細菌によって作られる成分だが、自身では作れない人もいるためサプリメントで直接摂取することがお勧め。複数のメーカーからサプリメントが販売されています。1日10mg以上のエクオール摂取が必要です」(平瀬センター長)
フェムテック・フェムケア企業が一堂に会する「Femtech Tokyo」の発案者で事務局長の下田アトムさんは昨年の開催時、VRで月経痛をリアルに感じられるコーナーを設置し、自身も体験した。
「この大変さが1週間ずっと続くなんて、と思う一方で、個人的には、体験して分かったような気になってはいけない、男性も含めた社会全体でリテラシーを上げていかなくては、とも思いました。知って終わりではなく、女性特有の健康課題の解決が当たり前になることが重要」(下田さん)
誰もが正しい知識を持ち、自分ごととして目を向ける。それが本当の意味での「フェムケア」となるのではないか。(ライター・羽根田真智)
※AERA 2024年3月11日号より抜粋