商品広告のTVCMや街で見かけるポスターには、様々なキャッチコピーがついています。その商品を売るため、人やお金を集めるための短い言葉――そのようなキャッチコピーを生み出すコピーライターのお仕事には、どのような"売れる法則"があるのでしょうか?



 コピーライター・川上徹也さんによる本書『1行バカ売れ』は、川上さんによって過去のコピーライティングの事例が整理分析され、分かり易く法則化されたもの。



 例えば、「レッドブル翼をさずける」――レッドブル社が販売する有名なエナジードリンクのキャッチコピーです。



 レッドブルの創業者はオーストリア人のディートリッヒ・マテシッツ氏。元々は家庭用品メーカーの社員だったマテシッシ氏でしたが、1980年代初め、日本の高額納税者リストの1位が、「ファイト!一発!」のキャッチコピーで有名な「リポビタンD」で財をなした大正製薬の会長であることを知ったことで、大きな転機を迎えます。ドリンク剤に巨大なビジネスチャンスを感じたマテシッツ氏は、タイのエナジードリンクとライセンス契約を結び、ヨーロッパ向けにアレンジして発売することを決意。1984年レッドブル社をオーストリアで設立します。



 エナジードリンクというジャンルがなかった当時のヨーロッパ。まず、マテシッシ氏はどのように商品のよさを伝えていくかを課題にし、クリエーターの友人にキャッチコピーを依頼しました。ところがマテシッツ氏は、1年半にわたって出された50以上の案を全て却下したといいます。



 そして、ある日、突然1行のフレーズを思いついたクリエーターが、夜中にもかかわらず、マテシッツ氏に電話をしてそれを伝えます。マテシッツ氏は一瞬で目を覚まし「それだ」と答えたフレーズが「Red Bull Gives You Wings.」――レッドブルを巨大飲料ブランドにした1行です。

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