実はこうした「おひとりさま」と呼ばれる「未婚」状態は、ここ20~30年で可能になった現象です。平成初期までも「おひとりさま」はいたかもしれませんが、数としては少数派だったはずです。かつても「ひとりを楽しむ」精神的自立を持った女性は多かったでしょうが、経済的自立となると、多くの場合、困難に直面したからです。男女雇用機会均等法(1986年施行)以前は女性が就ける仕事は限られており、仮に「仕事」があったとしても、生活に余裕が出るまでの収入を得られる人はほんの一握りでした。基本的に若いうちは父親に、成人しては夫に、老いては子に養われるのが通常の女性の生涯では、「おひとりさま」に必要不可欠な「経済的自立」が非現実的だったのです。裏を返せば、現代の世の中でも「おひとりさま」生活を謳歌できるのは、一部の女性に限定されていると言えるでしょう。

 2000年代に入り、非正規雇用者が増え、2022年時点で、15~64歳の就業率は78.4%で、女性は72.4%ですが(男性は84.2%)、その「働く女性」の5割以上が、非正規雇用者です。

 パート・アルバイト・有期契約・嘱託社員・派遣社員など、様々な形態がある「非正規雇用者」ですが、平均年収は決して高くありません。国税庁の「民間給与実態統計調査」(令和3年版)によると、非正規雇用者全体の平均年収は198万円(正規雇用者全体の平均年収は508万円)ですが、そのうち男性は平均年収267万円(正社員は545万円)に対し、女性の非正規雇用者の平均年収は162万円(正社員は302万円)です。この数字は決して現代日本社会で生活する上で十分な金額とは言えません。

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