高性能・大口径・広角ズーム

 シグマから、開発発表当時から注目を集めていた度肝を抜くスペックの広角ズームレンズが発売された。35mm判フルサイズのイメージサークルをカバーするこの焦点域で開放F2通しという世界初の仕様として登場したからだ。
 これに先駆けて、ズームレンズとしては大口径なAPS-C用の18-35mm F1.8 DC HSM│Artも非常に高性能であることが知られているが、本レンズもまたシグマが性能を追求して送り出しているArtラインシリーズに加わる。大口径だから、開放時の画質は少しくらい犠牲にしてもかまわないというユルい思想が、いっさいなかったことを最初に報告しておきたい。

テレ端側で至近距離、開放絞りという条件。コントラストも良好で合焦点のシャープネスも十分。ボケ味はより大きいがズームレンズにありがちなクセは一切感じられない。見事な描写だ●35㍉時・キヤノン EOS 5D MarkⅢ・AE(絞りf2・640分の1秒・-0.3補正)・ISO200・AWB・RAW
テレ端側で至近距離、開放絞りという条件。コントラストも良好で合焦点のシャープネスも十分。ボケ味はより大きいがズームレンズにありがちなクセは一切感じられない。見事な描写だ●35㍉時・キヤノン EOS 5D MarkⅢ・AE(絞りf2・640分の1秒・-0.3補正)・ISO200・AWB・RAW

 レンズは940gと重量級で、全長も122.7mmと長めである。これも性能追求のためだろう。もっとも、同社の単焦点レンズの24mm F1.4 DG HSM│Artや35mm F1.4 DG HSM│Artが、ともに665gであることを考えれば、存在意義は十分ある。Artラインの製品らしく、鏡胴の仕上げも良好でバランスもいい。
 ファインダーをのぞいただけでもキレ込みのよさがわかるほど。焦点域としては、性能を重視しているのはワイド端のようだ。絞りによる性能変化も小さい。開放時の周辺光量低下も軽微でまず問題にはならないだろう。ボケ味も自然だ。ズーム比は大きくないが、広角では使用頻度の高い焦点域である。24mmと35mmではパースペクティブや被写界深度も大きく異なるので便利だ。最短撮影距離も28cmと短い。フォーカスリング、ズームリングのトルク感も良好。広角レンズ好きにはたまらない一本である。
 少し古い話になるが、かつてキヤノンにFD24-35mm F3.5 S.S.C.アスフェリカルという名玉の感動的な描写を上回る出来栄えである。高画素時代にふさわしい広角ズームの誕生は多くの人に歓迎されることだろう。



ワイド端側で、撮影距離は50㌢ほど。絞り開放だが、合焦点のシャープネス、ボケ味の自然さがよい。ズームレンズのせいか、開放F2だと24㍉の被写界深度はこんなにも浅かったかと、あらためて驚かされる●24㍉時・キヤノン EOS 5D MarkⅢ・AE(絞りf2・2000分の1秒・-0.7補正)・ISO100・AWB・RAW
ワイド端側で、撮影距離は50㌢ほど。絞り開放だが、合焦点のシャープネス、ボケ味の自然さがよい。ズームレンズのせいか、開放F2だと24㍉の被写界深度はこんなにも浅かったかと、あらためて驚かされる●24㍉時・キヤノン EOS 5D MarkⅢ・AE(絞りf2・2000分の1秒・-0.7補正)・ISO100・AWB・RAW



シグマ単焦点レンズと比べる!

 シグマのArtラインには、今回のズームレンズと焦点距離が重なる24mm F1.4 DG HSM | Art(実売10万5320円)と、35mm F1.4 DG HSM | Art(実売9万3130円)がある。そこで、絞りをf2.8に設定し、同条件で撮り比べてみた。比較写真は中央の一部拡大したもの。24㍉での描写は、両者の区別がつかないほど酷似しているが、細部のコントラストは今回のズームレンズの方が高い。開放F値が1段違うためか、周辺光量低下は単焦点レンズのほうが、やや軽微だ。35㍉時では、単焦点レンズのほうが線は細く解像感が高い。35mm F1.4 DG HSM | Artの性能があまりにも高性能なためということなのだろう



●キヤノン EOS 5D MarkIII・AE(絞りf2.8・2500分の1秒・-0.3補正)・ISO200・AWB・RAW

◆ 赤城耕一


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●焦点距離・F値:24~35mm・F2●レンズ構成:13群18枚(FLDガラス1枚、SLDガラス5枚、SLD非球面レンズ2枚、非球面レンズ1枚)●最短撮影距離:28cm●最大撮影倍率:1:4.4●画角:84.1°~63.4°●フィルター径:Φ82mm●マウント:シグマ、ニコン、キヤノン●大きさ・重さ:Φ87.6×122.7mm・940g●価格(税別)15万円(実売12万9600円)