『今日、誰のために生きる?----アフリカの小さな村が教えてくれた幸せがずっと続く30の物語』ひすいこたろう,SHOGEN 廣済堂出版
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 せわしない日々を駆け抜けるように生きる私たち。たまには立ち止まって、ちょっぴりスピリチュアルなお話に耳を傾けてみるのもいいのかもしれません。今回ご紹介するのは、ひすいこたろうさんの著書『今日、誰のために生きる?----アフリカの小さな村が教えてくれた幸せがずっと続く30の物語』。同書のおよそ半分を占めているのは、ひすいさんが出会ったペンキアーティスト「SHOGEN(ショーゲン)」さんによって語られるお話です。SHOGENさんがアフリカにあるブンジュ村というコミュニティで過ごした体験談となっています。

 もともと化粧品会社で営業の仕事をしていたというSHOGENさん。28歳のとき、ティンガティンガというペンキ画に衝撃を受け、会社を退職してアフリカのタンザニアにあるティンガティンガ村へアートを学びに行くことを決意します。しかし現地でカンビリさんという男性に「ここは観光地だから、勉強するには受講料が高い。だからオレが住んでいる村に来て、一緒に生活をしながら描いたらどう?」(同書より)と勧められたことから訪れたのがブンジュ村でした。ティンガティンガ村からバスを乗り継いで3時間かかる、200人ほどの小さな村だそうです。

 こうしてカンビリさんのおうちにお世話になることとなったSHOGENさんは、ブンジュ村での生活について「僕はこの村で、幸せとは何か、どうしたら人は幸せに生きられるのかを、村人みんなから教えてもらうことになります(同書より)」と振り返ります。

 当たり前のことですが、私たちは「幸せを感じる心」を持っていないと幸せを感じ取ることはできません。しかし世の中には、物質的に満たされていても、この心をなかなか持てない人が多いのではないでしょうか。同書に記されたブンジュ村の人々や暮らしには、「幸せを感じる心」をいかに持ち合わせるかという秘訣がたくさん詰まっています。

 たとえば、ブンジュ村の人々は自分の仕事に誇りを持っているものの、15時半になると徹底して仕事を終えるそう。「残業」という考え方はありません。いつもギリギリまで粘って絵を描き続けていたSHOGENさんは、ある日、村長に「ショーゲン、いい作品は、心に余裕がないとできないよ」と言われます。

「人間というのは、本来、日の出とともに起きて、日の入りとともに寝る。そういう生活に近づくことが、真の休息を得ることであり、心身の余裕を生み出すことなんだと、僕はこの日、暗闇の中でそう教えてもらいました」(同書より)とSHOGENさんは語っています。

 ほかにも、喜びについて、失敗について、愛についてなど、さまざまな気づきを与えてくれる同書。後半では、約70冊の著書を通して幸せを追求してきたひすいさんによる解説がおこなわれ、ブンジュ村の教えをさらにわかりやすく私たちの日常生活に落とし込めるようになっています。忙しさから心にゆとりをなくし、幸せを感じる心がどこかに行ってしまっている......もしそんなふうに思う人がいたら、同書が良いヒントをくれるかもしれません。

[文・鷺ノ宮やよい]