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資本主義社会に生きる限り、自己肯定感や自己拡張と消費活動には切っても切れない縁があります。海外旅行どころか、国内でも外国人旅行者向け価格のためおいそれとは体験できない、購入できない、イベントや物品が日に日に増えている実感があります。タイパだコスパだと、損しないことを優先するのが得策、という風潮もある。そんな時代、若者に「リスクを恐れず大志を抱け!」と言うのは酷だなと、つくづく思います。言っているのは「消費しないと何事にも勝てない!」とおしりを叩かれ続けてきた世代。あまりにも社会背景が異なる。
エンタメの様相もじわじわと、しかし確実に変化しています。こんな時代には弱者が強者を倒す下剋上物語が好まれると思っていましたが、いまはその気力すら薄れているような。とにかく、みんなで穏やかに互いを受容しあい、なぐさめあいながら楽しくやっていくムードのほうが勝っている。ラジオやポッドキャストなどの音声メディアが好まれるようになったのも、その影響でしょう。
それらの仕事をしている私にとってはありがたいことですが、これでいいのかと不安になるのも正直な気持ちです。
※AERA 2024年3月4日号
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