エッセイスト 小島慶子
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 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

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 10年ぶりに、日本に定住することになりました。日豪往復渡り鳥母さん生活も、ついに完結です。

 オーストラリアの新学年は2月スタート。高校生だった次男が大学に進学し、パースの実家を離れました。大学4年生の長男も、来年は就職して自活を始めます。

 2014年に、当時まだ小学生だった息子たちと夫の生活拠点をオーストラリアに移してから丸10年。これまではひたすら私が日本からオーストラリアに飛んで家族に会いに行っていたけれど、今年1月には次男が卒業旅行で来日。夏頃には長男が会いにきます。この10年間、彼らは一度も日本に戻っていませんでした。オーストラリアの生活にしっかり馴染むためと、旅費の節約のためです。

変化は寂しいけれど、新しいことはいつもワクワクしますよね(gettyimages)

 でも大学生になれば、アルバイトでお金を貯めて自腹で日本にやってくることができます。子どもたちが幼かった頃は私が年に10回ほど日豪を往復していましたが、向こうから会いに来るなんて! 成長がうれしい半面、ちょっと寂しい気もします。この1年かけて夫は今借りているパースの住宅の家財を整理し、来年には夫婦で「子育て後」の新生活を始めることになります。それがどんな形になるかはまだはっきりわからないけれど、10年間4人で暮らしていた借家は必要なくなります。

 海外子育ての大冒険で、ここ10年は夫婦ともに目の前のことに必死でした。ふと気づいたら子どもたちの巣立ちの時期を迎えていた!というのが実感です。遠くの街で新生活を始めた次男、来年に向けて準備に忙しい長男、片付けを始めた夫、渡り鳥生活を引退して10年ぶりに日本に定住する私。変化は寂しいけれど、新しいことが始まるのはワクワクします。息子たちが巣立った後は、同棲していた頃のように夫と二人で手探りの新生活を始めるのもいいかもしれないと思っています。

AERA 2024年2月26日号