第2次世界大戦中のドイツ。ナチスによるユダヤ人への抑圧に、ドイツ人でありながら立ち向かった人物がいた。
ユダヤ人が多く働くベルリンの盲人作業所の所長で、自身もほぼ盲目の、ヴァイト。
ヴァイトは何度も身を挺して、ナチスの秘密警察によるユダヤ人の強制収容から、ユダヤ人作業者たちを守り続けた。単身アウシュビッツに向かい、ユダヤ人収容者を助けようとしたりもした。
著者は、そのヴァイトに命を救われた、当時の少女。みんなが「パパ」と呼び慕った、ヴァイトの勇気ある行動を、子ども向けの絵本にした。
ヴァイトへの愛情あふれる優しい語り口と、柔らかなタッチの絵で、当時のドイツでのユダヤ人たちの様子が、重苦しくなりすぎないような雰囲気で伝わってくる。
当時、ドイツで何が起こっていたのか。未来へ伝えていかなければならないことは何なのか。大人にとっても“響く”絵本である。
※週刊朝日 2015年9月4日号