税理士法人TOTAL 神田事務所所長・税理士 廣岡実(ひろおか・みのる)/顧客の立場に寄り添ったきめ細かいアドバイスが人気。著書に『お金の管理が苦手なフリーランスのためのお金と税金のことが90分でわかる本』(アスコム)(撮影/矢部ひとみ)

Qいろいろあるけど結局、どの方法が得なの?

 今までの説明の通り、消費税の計算方法には「原則課税方式」「簡易課税方式」があり、さらにインボイス制度を適用した、本来は免税事業者であった事業者のみが選択できる「2割特例」があります。

 計算の簡単さでは「簡易課税方式」になります。「2割特例」を選択できる人であれば、ほとんどの業種の人は「2割特例」を選んだ方が税負担は軽くなると言えそうですが、卸売業や小売業の場合は「簡易課税方式」を選択した方が得になります。

(2年前の)課税売上高が5千万円を超える事業者は「原則課税方式」しか選べませんが、それ以外で「原則課税方式」のままの方が得になるのはどんなケースでしょうか。それは、基本的に給与や減価償却費、それに借入金利が経費に占める割合が少ない事業者です。さらに、預かった消費税より支払った消費税の方が多くなる場合です。

 例えば、高額な設備投資をした場合や、消費税のかからない輸出取引がメインの商売をしている人などで仕入れ税額が売上税額よりも多い場合には、払いすぎた消費税は還付されます。これが、「簡易課税方式」を選ぶと、還付されるべき税額が算出されません。簡易課税方式は還付どころか、必ず消費税を納付しなければならなくなります。

 このように、消費税の納税方法はどれがベストかは状況によります。「あの人はこうやっているから」と周りの情報に流されて選ぶのではなく、正しい知識を持って、判断することが大事です。

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