原作者の希望に沿えない場合も

――業界内で、映像化をめぐるトラブルは頻発しているのでしょうか?

 そういう話はよく聞きます。漫画は、漫画家自身が全コマに責任をもって描きたいものを描く、作家性が強い世界なんですよね。みなさん、作品に込めた信念や世界観をすごく大事になさっている。

 それゆえ、原作者が作品のコアだと思っている部分と、映像化するスタッフがここを見せたいと思う部分がすれ違った結果、「ドラマ化の話はなかったことにしてほしい」「原作者として自分の名前を出したくない」と嘆く同業者も一定数います。やはり契約を交わす前に、原作者は許諾の条件をしっかり主張して、どういう方向で作品化するのかをよく話し合って確認したほうがいいと思います。

 とはいえ、スタッフがいくら真摯な思いで取り組んでいても、原作者の希望に沿えない場合もあります。映像作品というのは非常に多くの人が関わるので、さまざまなファクターが加わってくるんですね。たとえば、芸能事務所の意向があるのでこのキャストの見せ場は削れないといった事態も起こり得るので、「原作者が提示した条件を守れない場合は誠意をもって解決策を探る」といった内容も契約書に盛り込むべきです。

 亡くなられた芦原さんは、ご本人のコメントを読む限り、そのあたりも十分注意して条件を提示されていたようですが、結果的に守られなかったのだとしたら、とても残念なことです。

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「ここで逆らったら二度と描けないよ」